U-17日本代表、はや4強が見えた。欧州王者オランダに歴史的快勝 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

 若月のスピードには、さすがのヨーロッパチャンピオンもほぼお手上げ状態だった。若月は複雑な駆け引きをするわけでもなく、シンプルに走り出すだけだったにもかかわらず、DFラインの背後にパスを送りさえすれば、決定機は次々に生まれた。

「オランダはこういう(日本のような)相手とやったことがないんじゃないかと思うくらい、背後に対してのケアが甘いなと思った。日本は(スピードだけでなく)信頼関係でああいう(相手が嫌がる)ところに(パスを)出せるのが武器なんで。そういう日本の武器を出せたからこそ、背後を何本も取れたのかなと思う」

 殊勲の背番号9はそう語り、自らの2ゴールをお膳立てしてくれた2トップのパートナー、FW西川潤への感謝の言葉を続ける。

「潤は結構足もとで受けられるんで、自分は背後(を狙う)というところをこのチームの武器にしようと、練習からかなりやってきた。それを、最大限に生かせたかなと思う。潤の左足はかなり精度が高いのはわかっているし、潤がドリブルでボールを持った時に目が合って、『ここに来る』っていうのが、自分でもわかったというか、気持ちがつながったというか、あの(先制点の)瞬間、ここだっていうところにピンポイントでパスをくれた。もう自分が決めるだけだなと思った」

 年代を問わず、代表チームとは、普段は敵味方に分かれて戦う選手たちの集まりである。藤田もまた、「大和の足が速いのはわかっていても、裏を取られてしまうことを実感している」ひとりである。だからこそ、「チームとして、それが"確信できる武器"になっている」と、藤田は言う。

 ただし、日本が若月のスピードに頼るだけの、単調なロングカウンターに終始していたのなら、おそらくこれほど多くのチャンスは作れなかったに違いない。

 オランダに背後への恐怖を植えつけつつも、日本は低い位置からでも、奪ったボールを落ち着いて動かすことができていた。実際、若月の先制点にしても、西川―若月のホットラインばかりが目立つが、自陣からしっかりとつないだボールが、前を向ける体勢の西川にわたったことから生まれている。

 この試合のボールポゼッション率を見ると、60%対40%で、たしかに日本は劣っていた。だが、この数字から受ける印象以上に、日本は落ち着いてパスをつなぐことができていた。若月のスピードが、あまりに威力を発揮した理由である。

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