2019.07.16

「嫌でしたよ」。黄金世代・酒井友之が
語るトルシエ戦術とコンバート

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

「トルシエには左ばっかりじゃなく、右サイドも上がっていくように言われたんですが、僕は自分で勝負するタイプじゃないですからね(苦笑)。中盤がボールを持てるので、自分はタイミングを見て、スペースに走り込むようにしたり、中盤で作ったものを僕がサイドを駆け上がって受けることが多かった。あと、遠藤とかイナ(稲本)とかがサイドチェンジのボールを蹴れるんで、僕がそれをタイミング良く上がって受けるプレーもありました。行きづまった時は僕が高いところで受けて、クロスとかシュートまで行くとか、けっこう攻守に上下しないといけないので、かなりキツかったですね」

 トルシエ監督の指導は独特で、ピッチ上では感情をむき出しにしていた。指揮官の激しい要求に戸惑う選手もいたが、そういう選手を容赦なく追い込んでいった。

「トルシエ監督は戦う気持ちが見えない選手や、試合はもちろん練習中でもダラダラしている選手には厳しかった。今までの監督とは全然違いましたけど、僕はそういうのが世界で戦うには必要だなって思っていました。ジェフでも外国人選手はちょっとボールを回されるとイライラしてきてスライディングしてくるんですよ。普段の練習から闘争心を持って、100%でやらないと試合では出ないんです。球際の強さとかも外国人選手と差を感じていたので、トルシエ監督が求めているのは理解できましたね。練習中、基本的に僕はあまり怒られなかったです。僕に求められていたのは切り替えの早さ、球際の強さとか運動量、それに戦う姿勢で、それを最低限出せていたと思うし、あとはまあ、うまくやっていたんで(笑)」

 ただ、意味がないと感じる理不尽な練習もあった。

 FKの壁の練習と称してペナルティーボックス内に5人ほど壁になって立たせ、そこを目がけてトルシエ監督は思い切りボールを蹴った。「壁は動くな」と言われるので選手は飛んできたボールを動いて避けることができず、体や頭に当たる。痛いが動いて避ければ怒られる。数本蹴って次、また新しい5人が並び、トルシエ監督の強烈なボールを受ける。監督のストレス発散としか思えない練習をやらされたという。