ブラジルで「失ったものを取り戻す」岡崎慎司は6年前と同じ覚悟だった

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • photo by AFLO

 コパ・アメリカ・グループステージ最終戦、エクアドル戦の会場となるベロオリゾンテのミネイロン・スタジアムは、岡崎慎司(レスター・シティ)にとって縁起のいい場所である。

 2013年6月、コンフェデレーションズカップのメキシコ戦で2試合連続ゴールを記録し、マインツからのオファーを掴み取ったのだ。シュツットガルトではサイドで起用されて不遇をかこっていたが、国際舞台でストライカーとしての能力を証明し、キャリアを切り開いたのである。

若手主体で臨んだコパ・アメリカで2試合先発した岡崎慎司若手主体で臨んだコパ・アメリカで2試合先発した岡崎慎司 その後、マインツで2シーズン連続ふたケタゴールを達成した岡崎は、憧れだったプレミアリーグの舞台へとたどり着く。

 あれから6年――。

 岡崎はあの時と同じように、覚悟を持ってブラジルにやって来た。

「今回、経験を求められて呼ばれたけれど、自分自身を取り戻さないといけないと思っていて。練習からそのつもりで取り組んできた。ちょうどレスターとの契約も切れて、まっさらな気持ちで代表に入れた。今回の招集は自分にとってプラスでしかないですね」

 2015年夏から始まった岡崎とレスターとの蜜月は今夏、終わりを告げた。

 これまで日本人FWがイングランドで成功した例がないなかで、4シーズンも在籍し、加入1年目にプレミア制覇を成し遂げたのだから、その足跡は称賛に値する。

 決して大柄ではない岡崎が屈強な猛者たちの集うプレミアでなぜ、生き残ることができたのか。その答えが、これだった。

 セカンドトップのポジションで、全部やる――。

 ゴールを目指しながら守備のスイッチを入れ、中盤とジェイミー・バーディーのつなぎ役を果たし、サイドにも顔を出す。奇跡の優勝は、岡崎の貢献なくしてあり得なかった。

 もっとも、プレミアで生き残る術(すべ)を見つけた一方で、失ったものもある。

 ストライカーとしてのスタイル、である。

「レスターで中盤のようなポジションをやっている時は、ボールを失うことが許されない部分があった。でも、FWは本来イチかバチかで狙うことも大事。マインツではそれができていたし、自分にはFWとして怖さがあったと思う。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る