岩渕真奈が一撃に込めた想い。なでしこはD組1位突破を狙う (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 以前は澤穂希、宮間あやといったカリスマ選手たちの後ろを追いかけている立場だったが、今大会は下の世代を牽引する立場としてW杯に向けた準備をしていた。ところが、5月に右膝を痛めてしまい、再びケガを負った状態で臨むW杯となってしまった。

 国内での最終合宿では、岩渕のほかに阪口夢穂、小林里歌子、そしてすでにケガによって大会前に離脱した植木理子(すべて日テレ・ベレーザ)ら、攻撃に関わる4人が別メニューを強いられるという異常事態になっていた。

「今焦ってもう1回(ケガを)やったら終わりだから......。焦らず、フランスに入ったら何とかここ(別メニュー組)から一抜けする」と目論んでいた言葉どおりにケガ組から一番に抜け出した岩渕だったが、それは初戦のわずか5日前のことだった。

 アルゼンチン戦では、攻めあぐねる戦況を複雑な想いで見つめていた岩渕。打開の一手として途中出場するも、結果はノーゴール。「情けない」と、自身の役割を十分すぎるほど理解しているからこそ、チームの力になれなかった自分に苛立っているように見えた。そんな岩渕の想いが、この一撃には込められていた。

 チームに自信を持たせるゴールを決めるのは、ほかの誰でもない岩渕でなければならなかった。DFが真正面に立ちはだかっていても、左右のコースではなくど真ん中を狙った。しかもGKの頭上にシュートを打ち、ネットに突き刺したところに彼女の強い意志を見た。「みんなの気持ちが乗った」と表現した岩渕。このゴールでなでしこジャパンのワールドカップはようやく幕を開けた。

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