U-20が払った授業料を取り戻す。完勝劇を演出した2つのキープレー (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

 初戦に続く、前半での失点。それも試合開始から1分と経たずに決められたとなれば、日本の選手たちに初戦の悪いイメージを想起させ、動揺させるに十分なものになっていたに違いない。

 気持ちのうえで試合に入り込むのが難しい試合序盤は、サッカーにおいて、いわば魔の時間帯。それでも、「(初戦の反省を踏まえ)気持ちの整理ができていた。最大限の準備をやった」と語る若原は、高い集中力と冷静な判断で、1対1のピンチを防いだ。

 大会直前に行なわれたコロンビアとの練習試合で、後半開始早々に失点を喫した反省から、「メキシコも(試合開始直後から攻撃的に)くると思っていた」。初戦のPKストップといい、このビッグセーブといい、試合の流れを変える、あるいは引き寄せるという点において、今大会の若原の働きは際立っている。本人は「そうなっているならうれしい」と控えめだが、その存在は、まさに頼れる守護神だ。

日本のゲームを効果的に組み立てていた藤本寛也日本のゲームを効果的に組み立てていた藤本寛也 そして、もうひとつのキープレーが、MF藤本寛也のビルドアップだ。

 試合開始早々のピンチを若原が防いだあとも、ロングボールからのセカンドボールを拾ったFWホセ・マシアスがシュートを放つなど、メキシコは攻勢に試合を進めていた。

 日本は球際での激しい攻防では引けを取らないものの、なかなか思うような攻撃が組み立てられずにいた。早く攻撃に転じたい日本にとっては、初戦前半のように、縦に攻め急ぐ悪癖が顔を出しても不思議はない状況である。

 ところが、今大会初出場となったボランチの藤本は、メキシコの攻勢が落ち着いた7分過ぎ、ボールを受けると、あえてひと呼吸置いてからパスをつないだ。あたかも、「じっくりボールを動かそうぜ」と、チーム全員にメッセージを送るかのように。藤本が語る。

「初戦は攻撃が縦に速くなり、結局、相手にボールを簡単に渡してしまい、攻められっぱなしになった。ベンチから見ていて、なんか気持ち悪かったというか、面白くなかった」

 初戦に比べると、明らかに落ち着いてボールを動かすことができた日本。メキシコを押し込み、サイドから、あるいは中央からと、多彩な攻撃を繰り出した。

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