2019.04.30

黄金世代、「播戸竜二に救われた」男が
チームに溶け込めた瞬間

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 以降、高田は試合をこなすごとにチームに馴染んでいったが、アフリカの生活にはなかなか慣れなかった。ブルキナファソ遠征を経験していないため、アフリカの環境に接するのは、ナイジェリア大会本番が初めてだったからだ。他の選手は免疫があったので、停電になっても平気な顔をしていたが、高田にとっては驚くことばかりで、かなり戸惑ったという。

「みんな、ホテルのエレベーターが止まっても気にしないし、食事の際に延びたパスタみたいなものが出てきても、『なんだこれ』って言って、笑いながら食べていた。本当にいろんな意味で『タフだな』と思いましたね。

 僕はそういうのを、結構気にしてしまうんですよ......。電話も当時は携帯とか現地で使えなくて、ホテルから電話をするには小銭が必要なんです。それで、日本の1万円札しか手元になくて、ホテルの地下に行って両替すると、もう半端ない量の札束を渡されて......。いやもう、いろいろなことが衝撃的でしたね」

 ナイジェリアは治安の問題もあって、外出は禁止されていた。ホテルに缶詰め状態だったが、チームメイトと一緒にいるのは楽しかった。みんなと一緒に、リラックスルームで日本のお笑い番組やドラマなどを鑑賞したり、ゲームをしたりして過ごした。

 そんななか、控え組の選手はピッチでも宿舎でも明るく、練習でも大きな声を出して、チームを盛り上げていた。決勝トーナメントに入ると、「景気づけや」と加地亮らが頭を丸めた。高田も「次はおまえや」と言われたという。

「シャワーの出が悪いし、日本から持ってきたシャンプーもなくなって、髪の毛がごわごわになってきたんですよ。それで、みんな『もう面倒くさい』って言って、1日ごとに誰かが頭を丸刈りにしていった。そして、『次は、ヤスやな』って言われたけど、僕は『ちょっと待て』と言って、逃げていました(笑)」

 丸刈り軍団が結成されていくなか、チームはさらに勝ち進んでいく。

 高田が一番印象に残っている試合は、決勝のスペイン戦だという。

 試合前、なぜかトルシエ監督が「おめでとう」と言った。これまでのピリピリしていた試合前とは異なり、どこかご褒美的な空気が流れていたことを、高田は感じていた。

「今考えると、このまま自分たちが優勝すると調子に乗るから、(トルシエ監督は)優勝させないような雰囲気を作りたかったのかもしれないですね。でも、そんな必要もなく、スペインは他の国とはレベルが違いすぎた。