なぜ黄金世代のサッカーは「一度味わうと、ほんまにヤバイ」のか? (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 説田浩之●撮影 photo by Setsuda Hiroyuki

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 こうして勝利を重ねるなか、チームと同じく辻本個人も、1試合ごとに成長し、自信をつけていった。その過程において、彼はトルシエ監督に対して感謝の気持ちを抱くようになったという。

 大会前、不安を抱えていた"フラット3"も、トルシエ監督から連日ラインコントロールの仕方を叩き込まれ、次第に3人のDFはお互いの顔を見ることなく、ラインをそろえて上下できるようになった。その結果、自らの強みは高さと対人への強さしかないと思っていた辻本も、ラインコントロールを習得し、プレーの幅を広げることができたからだ。

「最初"フラット3"の練習で、DF3人の距離とかタイミングとかがズレたら、『ノー!』と叫ぶトルシエ監督に胸ぐらをつかまれて、めちゃくちゃ怒られました。それで、胸に血が滲んでいたこともあったんです。そういうの、(小笠原)満男とか、ほんまに嫌そうな顔を見せていましたけどね(笑)。

 でも、僕はそういうのが意外と平気なんですよ。プロになる前にも、所属チームの監督に厳しく指導されていたので、とくにトルシエ監督からひどいことをされたな、とは思わへんかった。『なんやねん』と反発する気持ちもなかった。

 むしろ、トルシエ監督がいなかったらその後、(プロの)選手として生きていくことがより厳しくなっていたやろうし、(トルシエ監督が)厳しくするのも(優勝という)目標のためにやっていたと思うので、僕は感謝しかなかったですね」

 トルシエ監督の威圧的な指導、過激な言動に対して「理解できない」という選手もいたが、辻本にとっては、DFとしての引き出しを増やしてくれた"恩師"となった。

 そのトルシエ監督のもと、同世代の仲間たちと一緒に戦える最後の試合を迎える。決勝戦のスペイン戦である。

 この試合、辻本には「何もできなかった」という記憶しかないという。

「早い時間に失点して、そこから後手を踏んだというか、相手にチェックに行ってもボールは取れへんし、取ってもすぐに奪い返されてしまった。90分間、まったく何もできなかった」

 辻本は自分たちの強さに自信を持っていたが、0-4と完敗を喫して「世界にはまだ上がある」ということを痛感させられたという。

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