2019.01.04

女子サッカー3冠達成。
ベレーザが追求する理想のスタイルは超難解だ

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 今シーズンを締めくくる皇后杯決勝は、日テレ・ベレーザが延長の末にINAC神戸レオネッサを4−2で下し、大会連覇で13度目の優勝を手にした。

 ベレーザは、今シーズンから永田雅人監督のもと新たなサッカーに取り組んできた。多くの選手がゴール前で目まぐるしく入れ替わりながら、スペースとリズムを作ってきたこれまでのスタイルを一新。すべての動きに意図を持たせ、高い予測力から導き出すポジショニングが命のスタイルで、90分間神経を研ぎ澄ましていても、ハマるかハマらないかは紙一重という難しいミッションだ。
今季も圧倒的な強さを誇った日テレ・ベレーザ INACも今シーズンから、ベレーザのコーチとしても活躍していた鈴木俊監督が就任し、チーム改革の真っただ中。過去、INACは2011年から3シーズンはタイトルを総ナメにし、黄金期を迎えていた。その後、澤穂希、川澄奈穂美、近賀ゆかり、大野忍といったビッグネームがチームを去り、世代交代の過程で低迷する時期もあった。今シーズンは一から足元を固め、かつての粘り強いサッカーが戻ってきている。

 ここまで2冠のベレーザに対して、カップ戦、リーグ戦でともに2位に甘んじ、何としても一矢報いたいINAC。シーズン最後の皇后杯決勝での両者の激突は、まさに意地と意地のぶつかり合いとなり、120分でそれぞれに手応えを感じて戦っていた。

 最初に狙っていたゲームプランを進めたのはINACだった。ベレーザの1ボランチシステムと、2ボランチを組むINACのズレが生じるポイントをボールの奪いどころとして、ベレーザの攻撃の勢いを削いだ。たとえそこから最終ライン裏を突かれても、鮫島彩と三宅史織のCBが徹底して潰しにかかる。24分の場面はまさにそれだった。

 INACのDFライン裏へのボールに、ベレーザの1トップの田中美南が完璧なタイミングで走り出す。ボールのコースもズレはなかった。いつものINACであればゴール前で1対1に持ち込まれていただろう。しかし次の瞬間、ボールを鮮やかにカットしたのは鮫島だった。パスコースに対して準備を整えた鮫島の判断力が、田中のゴールへの動きを上回った。