なでしこ、3連敗も好感触。際立ったのは高倉監督の「コンバート力」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 アメリカで行なわれていた「トーナメント・オブ・ネイションズ」の最終戦は、なでしこジャパンの選手たちにとって大きなトライだった。第3戦の相手は、4月のAFC女子アジアカップ決勝でも対戦したオーストラリア。あちらはリベンジに燃えているであろうし、何よりオーストラリアは今大会でアメリカと首位に並んでおり、優勝の可能性があった。

いつものポジションではなく、ボランチとして出場した有吉佐織いつものポジションではなく、ボランチとして出場した有吉佐織 そんな勢いのあるチームにどう挑むのか。今大会でボランチに抜擢された有吉佐織(日テレ・ベレーザ)は、アメリカとの初戦を終えてから考えを巡らせていた。

 有吉のボランチ起用を高倉麻子監督から示唆されたのは、彼女が昨年3月に右膝前十字靭帯損傷を負う前のことだ。しかし、このケガで有吉はシーズンのほとんどをリハビリに費やす。なでしこジャパンに復帰したのは、今年のアルガルベカップからで、ポジションは本職のサイドバックだった。

 今回、コンディションが完全に戻りきっていないことを踏まえ、トップスピードで相手と対峙するサイドバックではなく、かねてより構想としてあった中盤の方がいいのではということで、手薄になっているボランチへの起用が決まった。

「ボランチって真ん中にいた方がいい、あんまり動き回らない方がいいっていう感覚だったんです。でも実際は違っていました。映像を見れば見るほど、課題だらけで......(苦笑)。出るからにはそこは修正して消化してチャレンジしていかないと」

 そう話す有吉は、アメリカ戦後に新たな気持ちでボランチに挑み直そうとしていた。

 そこで鮫島彩(INAC神戸)ら守備陣、中盤だけでなく、2トップの田中美南(日テレ・ベレーザ)、横山久美(AC長野)ら全員で徹底的に対策を練った。オーストラリア戦は日本にとって、今大会の初勝利はもちろん、主軸が欠けた中でどれだけ戦うことができるのか、メンバーを固定せずに強化を続けてきたベースアップがいかほどかを試される試合でもあった。選手たちが着手すべき点として選んだのは、攻撃ではなく守備だった。

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