惨敗のW杯、日本代表へのバッシングが、なぜ城彰二に集中したのか? (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 その夜、選手みんなが三々五々飲みながら、フランスでの最後の夜を一緒に過ごしているとき、城はひとりで部屋にこもって、自分の力のなさを噛みしめていた。

「世界と戦うには、まだまだ足りないものが多いなって、素直に思ったね。それは、技術的なことよりもメンタルの部分で。俺には"エース"になって、プレッシャーに打ち勝てるような精神力がなかった。

 もともと人が言っていることは気にしないタイプだし、批判されても動じないタイプだったけど、W杯ではまるで違った。W杯で"エース"になって戦うとなると、そのプレッシャーは今まで感じてきたものとはまったく違う。突然、夜中に起きたり、嘔吐したりして、ドクターに体がおかしくなったのかと聞いたら、それは精神的なものだと言われた。自分はそんなヤワじゃないし、そんなタイプでもないのでびっくりしたけど、それが俺の現実だった」

W杯で自分の力のなさを思い知らされたという城彰二W杯で自分の力のなさを思い知らされたという城彰二 W杯という"本物の世界"で戦うことになって、本当の自分の姿が見えてしまった。それまで、自らを信じて培ってきた強さは崩壊していた。実は「自分は本当の強さなど身につけていなかったんだ」という現実を、城は思い知らされたのだ。

 同時に、思い描いていた夢が消えてしまった。

「アトランタ五輪のときもそうだったけど、『今回もW杯で活躍すれば世界から注目され、いろいろなチャンスが出てくる』と思っていた。でも、結果を残せなかった。『あぁ、全部失ってしまったな』って思ったね」

 大会を終えて、城の手元に残ったのは「やりきった」という充実感ではなく、世界に通用しなかった本当の自分の姿と、「すべてを失ってしまった」という失望感だった。

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