ハリル劇場はスリル満点。W杯アジア予選は「心臓に悪い試合」が続く

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 どんなに強気を装ってみても、旧ユーゴスラビア出身の指揮官は初戦でUAEに敗れたことに、かなりのショックを受けていたに違いない。

 試合前に発表された先発メンバーを見て、そんなことを感じた。

 W杯アジア最終予選の第2戦となるアウェーのタイ戦。日本は前のUAE戦から先発メンバー3人を入れ替えた。

 FW岡崎慎司→FW浅野拓磨、MF清武弘嗣→FW原口元気、MF大島僚太→MF山口蛍。

 この先発変更にうかがえる意図は、中盤の守備のバランスを整え、そこで奪ったボールを速い攻撃につなげること。やや重心を後ろに下げ、慎重に戦おうという姿勢が見てとれた。「チームとしてどう守備をするか。中盤のバランスを意識してやった」とはDF森重真人の弁だ。

 UAE戦では、ボランチやサイドバックも加わり、人数をかけて相手を押し込んだが、ゴールはFKからのわずか1点にとどまった。そればかりか、むしろ中盤での守備がバランスを崩し、度々危ないカウンターに見舞われた。

 今回対戦したタイにしても、2トップは非常に技術が高く、カウンターの起点を作り出すことができる。ならば、むやみに前がかりになることなく、まずは中盤の守備を強化しようというわけだ。

 中盤での潰しやボール奪取に優れた山口をボランチに入れ、最前線にはスピードのある浅野を置く。現実的かつ妥当な選択をしたとも言えるし、腰が引けた弱気な選択をしたとも言える。

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