澤穂希の軌跡(3)「もっと攻めて」最後に叶った大野忍の願い
「今後もなでしこが輝き続けるためには結果が必要。そういうのは後輩に伝えてきたつもりです」――澤穂希――
所属チーム、代表でも、ともに戦ってきた澤穂希と大野忍 なでしこジャパンはもとより、日テレ・ベレーザ、INAC神戸レオネッサと、澤と所属をともにし、最も身近でその存在を感じていたのは大野忍ではないだろうか。ポジションも近く、若き大野にゴールを決めさせようと、お膳立てする澤を見ることはよくある光景だった。
澤のこだわる"結果"に直結するプレーをするFWは、ゴールを決めることが自信につながっていく。澤は大野にゴールをもたらすことで成長を促していた。のちに大野は、持ち前のテクニックに磨きをかけ、小さいながらも世界に通用するエースへと成長していく。
2011年、脚光を浴びたドイツワールドカップ。サイドハーフで起用された大野は、慣れないポジションとFWのプライドの狭間で悩み続けた。その間、大野の苦しみを半分背負ったのが澤だった。ムードメーカーである大野が涙を見せられる、すべてをさらけ出せる存在が澤だったのだ。
ここ1、2年のINACでの澤は、自ら守備に回り、「苦しくなったら自分にボールを預けてくれればいいから」と、攻撃の組み立てや、ゴール前への走り出しといったボールに触る機会の多くを若手にゆだねるようになった。若手に"結果"を感じさせるためだ。そんな最近の澤が守備のスペシャリストであることは承知の上で、大野が澤に言い続けてきたことがある。
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