【なでしこ】仲間たちが語る、澤穂希という存在の大きさ (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 澤の影響力は絶大だ。INACで澤の相棒を務めた弱冠20歳の伊藤美紀は、現在、彼女が手にしているボランチとしてのすべてを、澤から学び取ったと言っても過言ではない。サイドで起用されていた伊藤は、今シーズン初めてボランチへコンバートされた。ボールに触れる機会が多い分、どうしてもミスのリスクも高まる。

「メンタル的に弱いので、ミスしたあとにズルズル落ちていってしまうんですけど、『ミスしてもやり続けていれば大丈夫』という澤さんの言葉に救われた」という伊藤。のびのびとピッチ中央でボールに絡みながら攻撃参加していく伊藤の後ろには、ピンチの芽を摘み、サポートに徹する澤の姿が必ずあった。澤のバックアップなしで勝負する来季のプレーこそ、伊藤の真価が問われることになる。

 そして誰よりも強い思いを抱いていたのは大野忍ではないだろうか。澤穂希という大きな看板のために生じた混乱時でも、常に澤のそばで、時に寄り添うように、時にいじり倒して笑いの中央に引き込んだりしながら歩んできた。だからなおさら、決勝に進んでも澤の引退の実感が湧かず、アップ中に「私、本当に辞めちゃうよ、シノ(大野)大丈夫?」と、笑いながら澤に声をかけられたことで急激に現実が押し寄せてきた。

「自分のゴールを捧げたかったんだけど、(澤自身で)決めちゃうんだもんなぁ」と笑いながらも、最後に何かをこらえるように表情を引き締めた。

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