問題多しハリルジャパン。ただ、監督批判だけでは何も生まれない

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi  photo by AFLO

 選手のハートに火は、本当に点いたのか――。

 やや大げさに言うなら、日本代表の試合で選手たちからこれほど「戦闘力」が感じられたのは、初めてかもしれない。

「戦闘力」というのは、「力強さ」と言い換えてもいい。球際での強さ、ボールを奪い取る強さ、相手よりも上回る攻守の切り替えの速さ――指揮官の言うところの、いわゆる「デュエル」の強さが、8月9日の中国戦でははっきりと見えた。

東アジアカップ3試合でノーゴールに終わった宇佐美貴史東アジアカップ3試合でノーゴールに終わった宇佐美貴史 象徴的なシーンを挙げるなら、後半に訪れた以下のふたつのシーンになる。

 DF森重真人が敵陣でチャレンジした直後、ボールがこぼれて中国にカウンターを浴びた瞬間、猛スピードで追走したDF米倉恒貴がタックルでストップした55分のシーン。あるいは、相手DFとGKにプレッシャーをかけたFW永井謙佑に、FW興梠慎三、MF山口蛍、MF武藤雄樹が続き、ボールを奪って武藤のシュートにつなげた70分のシーン。

 いずれの場面も、これまでに見られた「ただ寄せているだけ」のアリバイ的な守備ではなく、本気でボールを奪い返そうとする意思と意欲が伝わってきた。まるで自分のボールを奪われた子どもが、「ボールを返せ!」と無我夢中で掴みかかっていくかのように......。

 中国・武漢で開催された東アジアカップは、2分1敗で最下位に終わった。ハリルジャパンの評価が難しいのは、今大会でのテーマが曖昧だったからだ。優勝を狙うのか、テストに徹するのか――。ハリルホジッチ監督は大会が始まる前、「結果を探しに行きながら、新しい選手も探さなければならない」と、その両方を獲りに行くと宣言したが、このときすでに「難しい仕事になる」ということも想定していた。

1 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る