松田直樹の命日に思う。いま日本代表CBに欠けているもの (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 優秀なザゲイロは常に先を見通しており、堅牢で慎重な性格を持ち合わせる。ひらめきを使って攻撃してくる攻撃者に対し、少しでもリスクを減らし、優位性を保つ。その努力を惜しまない。

 例えばクリアというプレイには一流と凡庸の差が濃厚に出る。「能力の高いザゲイロは単純なクリアはしない。味方に向けて蹴り、分が悪くても、競らせる“パス”にする」(松田)。これはザゲイロのセンスを見極めるスカウティングの基本である。拮抗した状態、もしくは不利な状態でどんなキックができるか。クリア一つを見れば、ザゲイロとして常に準備し、用意しているか、「読み」の部分の評価ができるのだ。

「長年プレイして、俺はザゲイロが楽しくなってきた。若い頃は勢いやフィジカルだけでやっていたと思う。もちろん、それでうまく仕掛けてボールを取れていたこともあったけど、すごく下手くそだった。ザゲイロは自分のポジションだし、これを極めたいよね」

 日本サッカー史上最高のザゲイロのひとりである松田は、かつて明朗な表情で語っていた。守備者としての強さとその奥にある矜持(きょうじ)が、ザゲイロらしかった。中澤佑二、田中マルクス闘莉王も同じことが当てはまるか。個人的には、柏レイソルの鈴木大輔にはザゲイロの匂いを感じるのだが――。

 世界の一流アタッカーを封じる日本人ザゲイロの出現が待望される。
  

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