なでしこ最年少、岩渕真奈の「気持ちの余裕」がもたらす好循環

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko 早草紀子●撮影 photo by Hayakusa Noriko

 サッカー女子W杯カナダ大会準々決勝、日本対オーストラリア(1-0)の直後、岩渕真奈はおどけながらゴールシーンを振り返った。

「みんなが90分頑張ってくれたなかで、おいしいとこだけいただきましたけど......」

 まるでペロっと舌でも出しそうな表情で喜びを表現し、そして続けた。

「チームとして勝ててよかったなと一番に思います」

 自分のゴールをあえて茶化し、チームメイトを称えながら勝利を噛み締める。

自身2回目となるW杯を22歳でむかえた岩渕真奈自身2回目となるW杯を22歳でむかえた岩渕真奈 この4年間で、岩渕は大人になったんだなという印象を強く受けた。

 4年前のW杯ドイツ大会の時、岩渕は18歳。負傷も不調もあり、2試合に途中出場したのみ。もちろん得点はなかった。その姿は勝ち上がるチームの中で、ひときわ沈んで見えた。

 宿舎内でどのように過ごしていたかはわからないが、たとえばミックスゾーンを通る時、報道陣と極力目を合わせないようにし、足早に過ぎ去っていった。勝ち上がるごとに増すプレッシャーと、力を出し切れていない自分へのいら立ちを全身にまとっていた。とても話しかけられるものではなかった。

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