なでしこW杯で覚醒。オーストラリア戦で証明した勝負力 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 それは、なでしこの見せ場のひとつであるセットプレイにも表れていた。相手のマークがつきにくいゴール前での"タテ並び待ち"は今大会の定番となった。研究されているセットプレイ。それでも、待ちに待った残り3分での決勝点はやはりセットプレイからだった。

 宮間の左CKを熊谷紗希(オリンピック・リヨン)が競り、セカンドボールを宇津木瑠美(モンペリエHSC)がシュート。こぼれたところにツメた岩清水が、GKの弾き球に再び食らいつき、懸命に蹴り出した先にいたのは途中交代の岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)。

「みんながこぼれを頑張ってつないでくれたおかげ......感慨深いです。この1点であと2試合戦える」(岩渕)

 若くして注目を浴びてきた岩渕。2010年に代表初選出されてからこれまで、ドイツワールドカップ、ロンドンオリンピック――幾度となく佐々木監督からチャンスを与えられてきたが、結果を出せずにいた。自分に課せられたゴールを奪うという重責を今ようやく果たした。

 右膝のケガ込みで最終メンバーに選出されて期待を感じない日はなかった。初戦のケガで安藤梢(フランクフルト)がチームを離脱。代わってスタメンに入った菅澤優衣香(ジェフ市原千葉)も負傷。攻撃陣の相次ぐケガでチームが厳しい戦いを余儀なくされている中、岩渕の焦りはピークに達していた。このゴールは岩渕自身だけでなく、チームにとっても大きなゴールとなったに違いない。

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