「奪う力」の不足。小さくまとまるアギーレジャパン

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images Sport

 優勝する勢いが感じられない――ヨルダンに2-0で勝利した直後に実感したことだ。3試合を終えて、これだという、残り3試合を勝ち抜くための武器が見えてこないのだ。

 失点ゼロ。3試合連続完封勝ちした原因について、アギーレは最終ラインの堅さだけではなく、チーム全体としての守備意識の高さを挙げた。しかし、僕の目にはそう見えなかった。それなりに的確なポジションを取っていたために、穴を作らなかったに過ぎない。

ヨルダン戦で先制ゴールを決めた本田圭佑ヨルダン戦で先制ゴールを決めた本田圭佑 それ以上に触れるべきは、対戦した3チームのレベルの低さだ。日本の「守備」が良かったというより、相手の攻撃能力が低かった。攻撃のアイデア、攻撃に必要な個人技術、戦術に著しく欠けていた。相手が勝手にミスしてくれた。日本の組織立った厳しいプレスが決まり、嫌々ボールを奪われたという感じでは全くない。

 かつてより致命的なボールの失い方をしなくなったことは確かだ。嫌なボールの失い方をすれば、それはそのままピンチになる。それが連続すればパニックに陥る。アタフタしたり、ドタバタしたり、平常心を失ったプレイこそが、失点を招く一番の原因だが、そうしたミスはずいぶん減った。マイボール時におけるミスからピンチは生まれにくくなっている。

 だが相手のプレス、ボールの奪い方が、洒落(しゃれ)ていればそうはいかない。ミスはもっと出るだろう。しかし、これまで対戦した3チームの守備は、後ろに下がって守る傾向が強い、いわば田舎チームだった。

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