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代表発表直前。アギーレは宇佐美貴史とどう向き合うか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 そのコートジボワール戦で、ボールを奪われた香川真司が、しばらく天を仰ぎがっかりしていたシーンがあったが、これなどはその代表的なシーンになる。瞬間、ひどく落胆させられたことを覚えている。劣勢の時にそうした態度をされると、見るものの腹立たしさは倍増するが、宇佐美もそうした傾向を抱える選手だ。

 勤勉、真面目、忠実。これらは日本人のサッカー選手の長所と言われるが、相手にボールが移った時の宇佐美は、暢気、淡泊、わがままだ。そのように見えることがしばしばある。ボールを奪おうとする姿が想像しにくいのだ。相手ボールの時とマイボールの時と、ボールに対する反応がこれほど違う選手も珍しい。極端に言えば、興味があるのはマイボール時だけ。相手ボールの時には、ボールが自分の横を通過しているのに、我関せずとばかりそれを見送るシーンが目立つ。

 センターフォワード、1トップなら、まだ分からないではない。ボールを奪い返す行為に加わらなくても怒る気にはならないが、1.5列目の場合はそうはいかない。それが許されたのは、世界的には10年以上も前の話。現代で許されるのはメッシぐらいだ。プレッシャーを掛けなくても、自らボールを失ってくれる弱者が相手の場合はそれでもなんとかしのげるが、相手のレベルが上がると、そうした行為は致命傷になる。

 アギーレが新監督に就任した頃、とりわけ宇佐美は好調だった。今年2月に骨折。長期離脱を余儀なくされたが、復帰を果たすやJリーグで大活躍。ガンバ大阪、躍進の原動力として、存在感を発揮した。今度こそ代表に招集されるのではないか。淡い期待を抱いた人は少なくなかった。

 代表監督がザッケローニタイプなら願いは叶ったかもしれない。だが、アギーレは宇佐美ではなく、同じ22歳の武藤嘉紀を選んだ。そして武藤は代表チームでブレイクした。ベネズエラ戦で、見事なドリブルシュートを叩き込み、その名をアピールした。わずか4試合を経ただけで、外せない選手に昇格。本田圭佑、岡崎慎司の次に来るアタッカーになっている。

 ケガがなければ、ザックジャパンにも選ばれていたのではないか。ブラジルW杯にも出場していたのではないかという宇佐美と、武藤との代表選手としての評価の差は今、大きく開いた状態になる。

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