日本辛勝。得点力不足はアタッカーのせいではない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 バカ正直。リッチ感ゼロ。理由は様々あると思う。良いチームは、攻撃のリズムを調整するブレーンが後方にある。センターバックと守備的MFだ。彼らがワンテンポ置いたり、攻める方向を変えたりするものだ。しかし現在のアギーレジャパンは、そこが経験の浅い選手で固められている。森重真人、塩谷司、細貝萌。このジャマイカ戦は特にその傾向が強かった。

 細貝はよく頑張ったと思う。まさに勤勉、忠実、真面目にプレイした。しかし、それ以上のことはできなかった。9月に行なわれた2試合(ウルグアイ戦、ベネズエラ戦)では、彼は「Vの字」に並ぶ中盤の、高い位置でプレイした。そのときは、ゲームメーカー的なセンスが求められるポジションでプレイしたことを、ミスキャストではないか、守備的MF、アンカーに置くべきではないかと意見する声が多く聞かれた。

 だが、4-3-3にそのポジションは一つしかない。細貝にボールを的確にさばく力、展開する力がなければ、それはそのままチーム全体に大きく反映することになる。このジャマイカ戦は、細貝が持つ負の側面がチーム全体に波及したように見えた。そこで交通整理ができないまま、ボールは落ち着きなく前に進んでいった。

 この試合で細貝がプレイしたポジションは、バルサでは4番のポジションと言われる。かつてグアルディオラが4番をつけてプレイしたからだが、そのグアルディオラが現在、監督を務めるバイエルンでは、今季からシャビ・アロンソがそのポジションに就き、大成功を収めている。グアルディオラは、昨季も従来サイドバックだったラームをそこにコンバートし、成功を収めている。前線の選手が秩序なく、せかせかと一本調子で攻めていくこの日の日本代表を見せられると、4番のポジションの重要性を、改めて痛感させられるのであった。

 細貝を4-3-3で使うなら、9月に行なわれた2試合のようにVの字を描く中盤の高い位置に配置した方が理に叶っている。そして、フィード力のある柴崎岳をこの日の細貝の位置に使った方が、攻撃全体は数段滑らかになる。僕はそう思う。

 チャンスがあったのに奪ったゴールはわずかに1。しかもそれは相手のオウンゴールだったという事実に基づけば、前線の決定力不足に話は行き着く。実際、試合後の監督記者会見でも、そのことを指摘する質問が多く飛んだ。しかし、最後が決まらない理由、チャンスがより決定的なものにならなかった理由は、アタッカーの問題というより、後方の問題にある。攻撃の始点にあるというのが僕の意見だ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る