ザックJの棘(とげ)。大久保嘉人に「ジョーカー以上」の期待
ブラジルW杯まで11日
『ザックジャパンの完成度』
連載◆第33回:大久保嘉人
ブラジルW杯に挑む日本代表の壮行試合として行なわれたキプロス戦(5月27日/1-0)。後半13分、FW大久保嘉人がFW柿谷曜一朗に代わってピッチに入ると、スタジアムはこの日一番の大歓声に包まれた。
5月12日、ブラジルW杯メンバー発表後、大久保の人気と注目度が一気に増した。それは、彼自身のキャラクターもあるが、マンネリムードが漂っていた日本代表にようやく"棘(とげ)"のある選手が入ったことで、チームに何かしらの化学変化が起きるのはないか。何か新たなモノがもたらされるのではないか。そうした期待が大きかったからだ。
はたして、実際はどうだったのか――。
日本代表の切り札として期待される大久保嘉人。 キプロス戦の前に行なわれた強化合宿(5月21日~25日/鹿児島県)では、攻守における約束事の再確認と、フィジカルトレーニングが中心のメニューだった。フィジカルトレーニングは、ハードな練習で有名な国見高出身の大久保が「高校以来の厳しさだった」と語るほどきつかったようだが、大久保は常に明るく、充実した表情を見せていた。
そうしたトレーニングを消化する中で、気になったのは、大久保がザッケローニ監督からどんなことを要求されていたのか、ということだ。まもなく32歳の誕生日(1982年6月9日生まれ)を迎えるベテラン選手ではあるが、久しぶりの代表で何か特別な指示はあったのだろうか。
「(ザッケローニ監督からは)特に『ああしてほしい』とか『こうしてほしい』というのはなかったね。『今までどおりプレイしてほしい』って言われただけ。練習ではトップ下しかやらなかったけど、そのときに言われたことは、(トップ下の)基本は1トップと縦関係だけど、1トップ(の選手)とポジションを入れ替わってもいいし、2トップのような形になってもいい、ということ。あと、守備のことは細かく言われたけれども、そんなに難しくはない。守るときは、基本的には下がればいいんでね」
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