日本がオランダに「善戦」したもうひとつの理由 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 ファンハール監督は、試合後の会見で「あの1点で流れが変わった」と述べた。「2分前になったとき、ロッベンが全員に『2分前だぞ』と声を掛けた。リスクを負わないプレイで、前半を終えようと意思統一を図ったにもかかわらず、それができなかった」と悔やんだ。

 長谷部誠が中盤でボールを受けたとき、中盤の要、ナイジェル・デヨングは、よくいえば積極的なディフェンスで、ボールを奪おうと前に出た。しかし、長谷部はそれと入れ替わるように反転。ナイジェル・デヨングを置き去りするように、絶好のタイミングで前を向くことに成功した。

 そして前をゆく大迫にラストパス。長谷部のプレイも見事だったが、ボールを受けてから右足で流し込んだ大迫の一連のアクションはそれ以上に鮮やかだった。柿谷ではなく大迫を先発で起用したザッケローニの選択が光ったシーンと言うべきだろう。

 ファンハールはこう続けた。

「後半の頭から入ってきた2人の選手が、日本を勢いづかせた」

 2人の選手とは遠藤保仁と香川真司。バリバリの先発候補を、後半から投入したことで、日本の勢いは実際に増した。

 逆にオランダは、中盤の要、ナイジェル・デヨングをベンチに下げたことで、攻守のバランスを失った。

 彼がベンチに下がった理由は、前半44分の失点シーンで、長谷部に逆を取られてしまった責任を取らされたのかと思ったが、ファンハールに言わせれば「ケガだった」そうだ。本当の理由は定かではないが、この差が両チームの明暗を分けたと言っていい。

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