寿人、大久保、俊輔......。今こそ日本代表にベテランの力を! (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 窮地を脱するためには新たな変化が必要だが、その役割を若い選手に背負わせるのは、もはやあまりに酷。実際、期待された柿谷にしても、このままでは重責につぶされかねない。怖いもの知らずの若手の勢いに頼るには、あまりにも状況が悪化しすぎたのだ。

 そう言えば東アジアカップ直後、佐藤は「それは決していいことではないけれど」と付け加えたうえで、こんなことも話していた。

「もし自分が呼ばれるとすれば、代表がうまくいかなくなったときじゃないかと思う」

 まるで日本代表の行く末を予見していたかのような言葉だが、佐藤が言っていたように今の日本代表に必要なのは、むしろベテランの力ではないかと思う。進むべき道を見失い、フラフラとさまようチームに必要なのは、現状を冷静に受け止め、チームを落ち着かせることのできる「経験」なのだ。

 いかに勢いのある若手を抜擢したところで、チームの状況に気が回らず、自身が生き残ることだけで頭がいっぱいになってしまっては、今の日本代表をプラスの方向には導けない。血気盛んな若手と違い、代表選考のプレッシャーに硬くなることもなく、いい意味で気楽にプレイできるのもベテランを起用することの魅力だろう。

 幸いにして、現在のJ1には力が衰えるどころか、今まさに円熟のときを迎えたかのように30歳代の選手が活躍している。

 例えば、すでにシーズン自己最多となる22ゴールを記録し、得点王争いでトップを走る大久保嘉人。

 元々得点感覚には非凡なものがあったが、今季はとりわけ体にキレがあり、マークを振り切る瞬間的な加速は抜群。現在J1最多得点の川崎にあって、ツボを心得たプレイの数々が自らのゴールばかりでなく、多くのチャンスメイクにも貢献している。

 さらには、J1首位の横浜F・マリノスを引っ張る中村俊輔。

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