U-20女子W杯出場を逃したヤングなでしこの前に、不気味な「アジアの壁」 (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 韓国戦に敗れたあとから、何人かの声が混じり始めた。北朝鮮戦の際には初めて全員で円陣も組んだ。試合中、ベンチからの声が途切れることはなかったし、間違いなく、チームは一体感を見せていた。

 今シーズン、猶本自身も所属する浦和レッズレディースでベンチを温める日々を送っている。「試合に出られない人の気持ちはすごくわかるんです。その気持ちを押し殺してチームのために準備をしてくれる。そういうチームになれたことは本当によかったと思ってます。だからこそ、試合に出ている11人が結果を出せなかったことが悔しい」

 試合に飢えていたからこそ、この大会にかける想いも人一倍だった。「アジアで簡単に勝ち上がっては世界大会に行ったときにモロい。苦しい展開を勝って、世界に行きたい」と常に上を目指していた。しかし、互いに絆を深め合ったチームでも打ち破ることができない壁がそこにはあった。

 その壁とは一体どのようなものだったのか。「韓国も北朝鮮も中国も日本に対して引いて残る。そこでどう点を取るかが今後の課題」としたのは吉田弘監督だ。

 ことごとく各カテゴリーで4番手に甘んじていた韓国や中国がこの手に出ることは想像がつくが、驚いたのは北朝鮮だ。これまでどんなときでも、北朝鮮が日本に対して引くことはなかった。それが今大会ではそのプライドを捨てたのである。韓国に至ってはそのスタイルで北朝鮮までを撃破し、一気に優勝までのぼりつめた。アジアの国々から、日本が警戒すべき実力者として認められているということでもあるが、そのスタイルが日本を封じる手として確立されつつある証でもある。

 引いて守る相手に対する戦い方が苦手なのはこの世代だけではない。なでしこジャパンとて同じ。もし、今後アジアの強豪国が日本に対してこの作戦を用いた場合、それを打ち破る力が果たしてあるのか。ヤングなでしこたちの敗北は決して対岸の火事ではない。ヤングなでしこたちの課題であると同時に、なでしこジャパンにとっても課題になる可能性は極めて高い。今、目まぐるしい変化を見せているアジアの戦い方を目の当たりにした大会でもあった。

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