欧州遠征2連敗も、岡崎慎司だけがポジティブな理由 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano MIKI

 岡崎が言うように、従来の攻撃パターンとは異なるプレイが、それぞれの試合で垣間見ることができた。ベラルーシ戦では、ボランチの遠藤保仁がいつもの左サイドではなく、かなり右サイドに寄ってゲームを作っている時間帯があった。自分たちの形を崩し、リスクを負って点を取りにいくスタイルは、これまであまり見られなかったものだ。

「そういうのもあるし、例えば(相手にとって)危険なボールを積極的にゴール前に入れようとしていたのもそう。それは、味方に渡るかどうか五分五分のボールだけど、ゴール前に飛び出した(香川)真司や(柿谷)曜一朗に対して、かなり意識して入れていた。以前のように、パスで崩して、というよりも、速い攻撃で(本田)圭佑にボールが入ったら、みんなが裏を狙う形を随所で仕掛けていた。

 セルビア戦の後半には、圭佑が前を向いて持ち上がって、相手を引きつけてから右サイドの清武(弘嗣)にパス。そこから清武がダイレクトでクロスを入れて、(ゴール前に走り込んだ)自分が触ればゴールっていうシーンがあった。ああいう形をもっと増やすべきだし、ベラルーシ戦ではサイドバックを前に上げて、攻撃的に戦うことにもトライした。あれも、攻撃パターンを増やすためのチャレンジだった。

 単発の攻撃だけではなかなか点は入らないけれども、そこに2、3人の選手が絡めばもっといい攻撃ができる。手数をかけていくときもあるけど、"ここぞ"というときには少人数のコンビネーションで崩していく。それで点を取って、1-0と先行できれば、(コンフェデの)イタリア戦のように、自分たちのサッカーができるんです」

 世界と対峙する中で、アジアでは圧倒できた攻撃に限界を感じ、攻撃パターンを増やそうとすることは、W杯で勝つことを見据えれば必要なことだろう。とはいえ、攻撃のやり方について、試合の中で選手個々の意識がまだバラついているように見えた。

「確かに、シンプルにやりたい選手もいれば、意地でもショートパスをつなぎたい選手もいる。まだまだ状況や時間帯によって、選手間で共通の意識が持てないときはあったと思います。そうした細かいところは今後詰めていかないといけないけど、『点を取りたい』という思いはみんな同じなんですよ。だから今は、いろいろと制限するよりも、みんなで『これもありだな』『あれもありだな』と話し合いながら、攻撃のパターンを増やして、チャレンジしていくことが大事だと思っています」

 攻撃のパターンを増やすことも大事だが、煮詰めなければいけない部分もある。特に1トップの柿谷との連係は、いまだ十分に機能していないように見えた。

「曜一朗とは、ふたりだけでも崩せるように、という話をしています。2トップのような関係を築いて、自分が動けば曜一朗のスペースも生まれるし、曜一朗が動けば自分のスペースもできる。(前線に)ふたり、裏に抜ける選手がいるのは、チームにとっても大事なことだと思うし、そこにパスを合わせてもらえれば、少人数でも点が取れる確率は増すと思うんですよ。それができているか? というとまだまだだけど、そういうことも試合をこなして調整していくしかない」

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