【なでしこ】岩清水梓が語る心境の変化。「メダリストって呼ばれて焦りました」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko photo by Hayakusa Noriko

「難しいですね......。でも、指揮はできたと思う。前の選手に守備をやってもらって、相手を追い込むとか、ラインコントロールとか、相手を潰すタイミングとか......。指示を出す回数はかなり増えました」

 自身とチームの成長をプレイ中にも感じ取ることができていたロンドン五輪。チームの雰囲気が岩清水に及ぼす影響は大きかった。

「自分の場合、いつもみんなの雰囲気に乗っかって自信がつくんです(笑)。守備をする人間からすると、相手がどんな攻撃をしてくるかわからないから対応をいろいろ考えないといけない。どんなに強い相手でも、マイナスな方向に気持ちが向きかけたとしても、チームが『いや、勝てるでしょ!』って感じだと、『よしっ!』ってこっちも必然的に持っていかれるっていうか(笑)」

 あらためてチーム全員が同じ方向を向くことができていた五輪だったことがうかがえる。オリンピック銀メダルを獲得してから約5カ月が過ぎて、心境の変化はあるのだろうか。

「あの重たいモノを持って帰ってこられたことは選手として本当に大きかったな、と思います。だってよく周りから『メダリスト』って呼ばれるんですよ。正直、焦りますよね(笑)。最初は誰のこと言ってるのかわからなかったくらいです(笑)。自分の中ではワールドカップも、オリンピックも同じ世界大会だけど、周りは違うんだなって。オリンピックってやっぱり大きいんですね」

■スタートラインの新シーズン。「タイトルを獲りたい」

 オリンピックから帰国してすぐ、岩清水は所属する日テレ・ベレーザでなでしこリーグカップのタイトルを獲得する。澤穂希、大野忍、川澄奈穂美、近賀ゆかりらを擁するINAC神戸レオネッサを倒しての今シーズン初タイトルだった。

「このカップ戦を獲れたことは本当に嬉しかった! タイトルからちょっと遠ざかっていましたから......。最近はずっとINACに持っていかれていたタイトルを手にする喜びをベレーザのみんなと味わえたことがすごく嬉しかったです」

 2012シーズンは、U-20、U-17と各カテゴリーの世界大会が開催されたため、世代別の代表選手が多く所属するベレーザは、常に主力の誰かが欠けている状態だった。さらに、岩清水だけでなく、阪口夢穂、岩渕真奈らなでしこジャパンの選手を筆頭にケガ人も続出していた。ギリギリの戦力でシーズンを戦わなければならなかった。

「カップ戦のときくらいしか、戦力が整ってなかったんじゃないかな。U-20女子代表の選手も帰ってきてたけど、全然フィットしてなくて......。万全っていう訳でもなかった。作戦を練ったというより、あれはもうただの頑張り(笑)。あのときだってチャンスをモノにできたから勝てたけど、チャンスは少なかったし、攻め込まれて危ないシーンは多かった。

 結局、チャンスをモノにした方が、流れも結果も持って行くっていうサッカーの怖さ、面白さが私たちの方に向いただけなんですけど......。それでも、まともにみんなそろって戦うことができなかったシーズンの中でのベストゲームは、やっぱりカップ戦の決勝なんですよね」

 厳しいシーズンになることは十分に予想できていたとはいえ、実際に戦い抜くことは容易ではなかった。そんな中、プラスの要素もあったという。

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