2012.12.25

【なでしこ】ベストでなくても勝つ。
皇后杯でINAC神戸が示した「勝者のメンタリティ」

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

2010年から3大会連続での全日本選手権優勝を決めたINAC神戸 日本女子サッカーのシーズンの最後を締めくくる大会、それが全日本女子サッカー選手権だ。昨年までこの大会の決勝は元日に行なわれる男子の天皇杯決勝の前に組まれていた。もちろん、女子サッカーの知名度を上げるための苦肉の策だった。しかし、近年のなでしこブームもあり、今年から皇后杯として新たな一歩を踏み出した。

 クリスマス・イブのNACK5スタジアム(埼玉県大宮市)で行なわれた決勝は、3連覇を狙うリーグ覇者のINAC神戸レオネッサ対同6位のジェフユナイテッド千葉レディースというカードになった。過去の対戦成績からもINAC優勢かと思われたが、決勝のピッチは大激戦となった。

 このタイトルは絶対に獲りたい――。INACの面々は、いつにも増して気迫あふれるプレイで立ち上がりからジェフゴールを攻め立てた。圧倒的にボールを支配したのはINAC。だがジェフは、決勝という舞台で簡単にゴールを割る訳にはいかないと、最終ラインは文字通り身体を投げ出し、バイタルエリアでの相手のフィニッシュには全員で身体を寄せる。リーグ一の攻撃力を誇るINACを相手に、必然的に守備に追われるため、カウンター攻撃しかチャンスはなかったが、最後までINACを苦しめた。

 勝負を決する瞬間が訪れたのは後半、延長戦突入直前のアディショナルタイムのこと。INACが左CKを得る。中央の混戦から右サイドに流れたボールを澤穂希が中央へ送り、それを高瀬愛実がシュート、そのこぼれ球を田中明日菜が押し込んだ。

「絶対に決めたい!」という田中の、そして選手たちの気持ちをつないだ決勝ゴールだった。ピッチに歓喜の輪が広がる。こんなにも喜びの感情を爆発させるINACの選手たちを見るのはいつぶりだろうか。常勝軍団が見せるその表情に、この戦いの厳しさが現れていた。