【ヤングなでしこ】なでしこジャパンとは一味違うU-20世代の魅力とは? (2ページ目)

  • 松原渓●取材・文 text by Matsubara Kei
  • 早草紀子●撮影 photo by Hayakusa Noriko

 しかし、その攻撃的なスタイルには当然リスクもつきまとう。ヤングなでしこの良さが顕著に表れたメキシコ戦に対して、第2戦のニュージーランド戦はその課題が見えた試合だった。

 立ち上がりからボールポゼッションは日本に分があり、ゴールは時間の問題と思われた。だが、ゴール前でのパス、シュートの精度を欠き、相手陣内深くまで攻め込んだところでボールを奪われると、逆にニュージーランドの反撃をくらい、セットプレイとカウンターから、11分、15分と立て続けに失点した。

 その中で見えたひとつの課題が、攻撃時のパスのタイミング。ニュージーランドはメキシコに比べると、より組織を重視するチームだったため、日本は選手ひとりひとりにある程度スペースがあったが、そこでボールを持ちすぎた結果、敵のプレッシャーを受けて失う場面が目立った。

 こういった相手に対しては、個人の仕掛けを優先させると同時に、最低でも2本以上のより多くのパスコースを確保してリスクマネジメントも行ない、ボールを奪われた後の攻守の切り替えの速さも重要になってくる。

 また、2点を先制されたとはいえ、残り時間はまだまだあったので、同点、そして逆転を狙うことも十分に可能だったと思うが、失点後はそれまで果敢に仕掛けていたドリブルに迷いが出たり、ダイレクトクロスが入れば決定機というところで一度ボールを止めてしまったりと、判断に迷いが見られる場面が増えた。

 試合後、吉田弘監督が「自分たちのリズムでやっているときは非常にいい形が作れるが、ミスや失点した後に前向きにやるという精神になれていない。そういう意味では、なでしこジャパンの精神的な強さ、点を取られても最後まで自分のプレイをしっかりする、というところに届いていないと思います」と話したように、この点は試合経験を積むことで、着実に積み上げていくべきポイントだろう。

 そんな中、試合の流れを変えたのが、中盤で攻撃を牽引するエース・田中陽子だった。仲田歩夢に代わって入った西川明花が果敢なドリブル突破でサイド攻撃を仕掛けると、相手ゴール前でニュージーランドDFが処理にもたつく。田中陽子はこれを見逃さず、ボールを奪って1点を返し、これで日本の攻撃が再び息を吹き返した。

 後半は疲れの見えるニュージーランドが完全に引いた状態になり、日本が猛攻を仕掛ける。そして後半26分、田中陽子のコーナーキックから「センターフォワードとして、大儀見(優季)と競い合ってほしい」と吉田監督も期待する道上彩花がヘッドで決め、試合を振り出しに戻した。結局、このままドローに終わったが、先制されても追いつき、あわや逆転という展開まで持っていけるチームの力を示す試合内容だったといえる。

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