【日本代表】今野泰幸「『W杯優勝』という意識を11人が持っている」 (3ページ目)
確かに真剣勝負の場で、オーストラリア相手にアウェーで危なげない試合をしたことなど、過去にあまり例がない。内容的にも日本のほうが決定的なチャンスが多く、上回っていた。オーストラリアはPKの1点のみに終わり、力の差を見せつけた感があった。それは、今野が胸を張って語るように、攻撃が成長し、守備が安定している証拠だろう。ならば、日本は「強くなった」と言えるのだろうか。
「攻撃がよくなったのと、『強くなった』のとは違いますからね、そこは何とも言えません。やはりチームの本当の強さというのは、強いチームとやってみないとわからない。だからこそ、10月の欧州遠征は楽しみ(12日=フランス戦。16日=ブラジル戦※予定)。おそらくそこで、強烈な“壁”にぶち当たると思う。実際、そうなったほうがいいと思っています。そうしないと、日本のサッカーは成長しないですからね。そこで足りないパーツが何なのか、はっきりと見極めたいですね」
ザッケローニ監督就任以来、ここまで不動のレギュラーとしてプレイし、順調に来ている今野。最後に、ひとつだけ聞きたいことがあって、失礼ながら質問してみた。2年後のブラジルW杯まで、自身がチームに生き残る確率はどのくらいあるのか、と。年齢は選手として脂の乗り切った31歳になる。現在の代表の中で置かれた立場を考えても、相当な自信を持っているはずだ。が、今野の答えは意外なものだった。
「そんなのわからないですよ。Jリーグにはいい選手がたくさんいるじゃないですか。僕は、チームで活躍した選手が代表に入るものだと思っているし、代表というチームでは何が起こるかわからないですからね。だから、一年、一年が勝負だと思っているし、危機感しかないですよ。今も、これからも……」
今野がこれだけ慎重なのは、性格的なものもあるのだろうが、2010年南アフリカW杯で、直前の親善試合でレギュラーの座を奪いながら、負傷して本大会の出場機会はわずか数分に止まった。そうした経験があるから、常に危機意識を持っているわけだ。とはいえ、現代表の成長の一端を担っているのは、間違いなく今野である。彼なくして、ブラジルW杯の飛躍は語れない。
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