【なでしこジャパン】アメリカに惨敗して鮮明になった選手たちの「危機感」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 相手の動きを止めるまではイメージ通り。止めた後が続かない。そこまでは無理なのだろうか。いや、これまでは出来ていたはずだ。サポートに入る気配がない。その力はまだないのだろうか。いや、得意だったはずだ。高い位置のプレスから追い込んでいく――なでしこサッカーのベースになるものを表現していたのはアメリカの方だった。このコントラストが今回のゲームを象徴していた。

 だが、結局はこれでよかったのだ。昨年のワールドカップ優勝以降、なでしこジャパンは内容が伴わなくても、そこそこの結果につなげて、ここまで来てしまっていた。世界トップレベルの常勝国であれば、それもひとつの戦いかたであり、勝負強さと考えることもできる。しかし、日本にはまだそこまでの実力はない。にも関わらず、なんとなく結果が残ってしまう。これこそ、危険な傾向だった。

「危機感を持たなくてはいけない」と、常に自分自身に言い聞かせてきた選手たちにとって、ワールドカップ決勝を戦ったアメリカに惨敗するという現実を突きつけられるのが一番手っとり早い。なでしこジャパンはロンドンオリンピックを前に、一発ガツンとやられる必要があったのだ。

 2月のアルガルベカップでは、決勝でドイツに負けはしたが、1ゴール差まで追い上げるという健闘と準優勝という結果があったため、危機感の輪郭がボヤけてしまった。だが、このアメリカ戦で膿(うみ)は出し切った。受けるべきショック療法が、ここでやってきただけのことだ。回復させるか、さらに悪化させるかは自分たち次第だ。

 このスウェーデン招待を終えれば、いよいよオリンピック最終メンバーが絞り込まれる。20日(現地時間)の地元・スウェーデンとの試合では、主力級の選手たちにはこのリベンジを、定位置を狙う選手には求められる資質と意外性を、当落ライン上にいる選手たちには物怖じしない力強いプレイで心残りのない存分なアピールを望みたい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る