【なでしこジャパン】ドイツ戦へ視界良好。澤不在でアメリカに勝利してチームが得たもの (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 そんな展開の中で生まれた高瀬のゴールは終了まで残り6分というこれ以上ないタイミング。これにも助けられた。失点後、アメリカは攻撃のスピードが速まったし、パワープレイ気味のロングボールも増えた。テストの意味合いが強い大会といえども、日本に公式戦で2連敗することは、断じて許されない。そんな気迫が伝わってくる試合終了間際のアメリカの怒涛の攻撃を凌ぎ切ったことは評価に値する。

「(今日のアメリカは)世界大会で当たるアメリカとは全然違う。その違いを知っているだけに手放しでは喜べない」と語ったのはキャプテンの宮間あや。本気でないアメリカに勝っても......というところが本音なのだ。

 それでも、この試合での一番の収穫は澤・不在での勝利。もちろん澤はこのチームに欠かせない。ただ、澤の存在が、なでしこの選手たちに安心感を与えると同時に、澤に頼る弱さにもつながっていたことは事実。今回の勝利で自分たちだけでもある程度戦えるという自信になったはずだ。

「澤さんの代役で戦ったつもりはないです」と語ったボランチの田中をはじめ、「澤さんは偉大な存在。一人ひとりがしっかりと戦えるようになって、澤さんが戻ってきたときにまたプラスアルファになっていることを自分たちは願ってます」と語った右サイドバックの近賀ゆかりの言葉がそれを物語っている。

 いい意味で「澤離れ」をして、しっかりと自分たちの実力を発揮すること。そこから積み上げていけば、さらになでしこのサッカーは進化するはずだ。

 勝利でも敗北でも、アメリカ戦はいつも日本に多くのものを投げかけてくれる。結果だけに酔いしれるのではなく、ピッチでの呼吸ひとつ、コンビネーションひとつに心を配り、見つめ直す必要がある。このアメリカ戦には、今後の成長のヒントが散りばめられていたのではないか。選手たちはそれを見逃さないようにしてほしい。

 3月7日、日本時間・夜10時から行なわれる優勝決定戦の相手は世界ランキング2位のドイツ。昨年のW杯では準々決勝で日本に敗れ、ロンドン五輪の出場権を逃した(W杯準決勝進出が五輪出場の条件になっていた)。あれからメンバーも変わり、日本は新生ドイツ代表と初めて対戦する。

 アメリカ同様、ドイツも、日本は"倒すべき相手"として認識している。佐々木監督はこの決勝でも、勝利を目指しながらも、同時に新戦力も起用する方針という。アメリカ戦で出た課題を試す絶好の機会になるはずだ。

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