【なでしこジャパン】ドイツ戦へ視界良好。澤不在でアメリカに勝利してチームが得たもの

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

アメリカに初めて勝利して喜ぶキャプテンの宮間あやアメリカに初めて勝利して喜ぶキャプテンの宮間あや
 アルガルベカップ・グループB第3戦、なでしこジャパンが強豪・アメリカに初めて勝利した。決勝ゴールとなったのは高瀬愛実のヘディング。84分のことだった。この得点以降、アメリカの怒涛の攻撃を凌いだ日本が1-0で勝ちをおさめた。

 90分間で世界ランキング1位の女王を下したこの日のピッチに澤穂希の姿はなかった。体調不良により、ベンチ入りすらできていない。大黒柱を失った形でのアメリカとの戦い。どんな展開になるのか全く見当がつかなかった。

「前半耐えながら、後半に新しく入った選手が決めるというプラン通り」と試合後に話したのは佐々木則夫監督。日本は高い位置からプレスをかけ、立ち上がりから押しこまれた昨年のW杯決勝のアメリカ戦と同じ事態に陥らぬよう警戒していた。

 光ったのは澤の代わりにボランチに入った田中明日菜だ。同じボランチでペアを組むのは、幼き頃からともに歩んできた阪口夢穂。※田中も阪口も大阪府出身。阪口が1学年上で、中学時代は同じクラブに所属していた

「いつも(私の)一番近くでプレイして、難しいことは考えずに好きなように動いたらいいから」と阪口に背中を押された田中。昨年のアルガルベカップでもボランチとしてプレイし、佐々木監督をうならせた経緯がある。ボールの出し所を見つけられず、スピードをスローダウンさせてしまう場面もあったが、それでもアメリカ相手に物怖じすることなくぶつかっていけたのは、阪口との信頼関係があったからこそといえるだろう。

 佐々木監督は後半に5人もの選手を入れ替えた。もちろんアメリカという強豪相手に可能な限り多くの選手を試したいという思いもあった。本来アルガルベカップは、時期的な面から、どの国も現在の状況把握と、ライバル国の仕上がりのチェックといった意味合いを多分に含んでいる大会だ。昨年、この大会で日本に勝っているアメリカにとってもそれは同じこと。今回は日本が勝利をおさめたが、互いに内容はテスト色の濃いものだった。

 現在、アメリカはパスをつなぐサッカーを模索中だ。もちろんスピードとパワーは健在だが、日本のDFラインの背後にボールを放り込む戦術はほぼ封印していた。あくまでも"つなぐ"スタイルで日本と対することを選んでいたようだ。

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