【プロ野球】「監督が褒めてたぜ」は、近藤貞雄が記者に頼んだ仕掛け テスト入団の守備職人を覚醒させた"人心掌握術" (2ページ目)
【選手も呆れた猛抗議の舞台裏】
4月8日、ダイエー(現・ソフトバンク)との開幕戦、スターティングメンバーは以下のとおりだった。
1番(中)鈴木慶裕
2番(二)白井一幸
3番(DH)マイク・イースラー
4番(左)トニー・ブリューワ
5番(一)大島康徳
6番(遊)田中幸雄
7番(右)中島輝士
8番(捕)田村藤夫
9番(三)古屋英夫
投手は、前年15勝で最多勝に輝いたエースの西崎幸広が務めた。
開幕戦は同点の9回裏、ドラフト1位ルーキー・中島の2ランが飛び出し、劇的なサヨナラ勝ち。翌9日も延長10回にサヨナラ勝ちを収め、最高のスタートを切った。
そして迎えた3戦目。日本ハムが4点を追う7回、一死一、三塁の場面で、近藤はダイエー先発・加藤伸一の牽制擬投をめぐる審判の判定に激昂した。猛抗議の末、帽子を地面に叩きつけると、直後に退場を宣告された。
「その年は7月にもう1回、退場がありまして......。やはり相手投手の牽制をめぐる抗議でした。ベンチ前で審判と揉み合っていたので、どんなことを言うのか聞いていたんです。そしたら、『バカ』しか言わない。牽制動作についての説明なんて一切なくて、『おまえはバカだ。バカ! アホ!』って、ずーっと言ってる。それで『ヘタクソ!』って怒鳴った瞬間に、『退場!』って食らったわけです。
広瀬とふたりで『何だこれ、一軍監督の抗議かよ』って言ってたんですが、監督が戻ってきた時に立ち上がって頭を下げたら、『どうだった? 迫力あった?』って。広瀬と顔を見合わせて、『え? パフォーマンス?』って......。何かもう、そうやってチームを盛り上げようという考えがあったんでしょうね」
猛抗議は、近藤の代名詞でもあった。手を出せば即退場となるため、両手を腰の後ろで組み、審判の顔すれすれまで詰め寄って息巻く。その姿には、どこか滑稽さも漂っていた。
中日時代に近藤のもとでプレーし、前年に西武へ移籍した平野謙は、近藤が抗議するたびにベンチで拍手を送っていたという。中日、大洋時代には、セ・リーグ審判の柏木敏夫と激しく怒鳴り合い、胸を突き合わせることもしばしばあった。だが平野によれば、ふたりのやり取りに多少の芝居気があったことは、公然の秘密だった。
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