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【日本シリーズ】崖っぷちの阪神に何が起きているのか 藤川球児監督が38秒の会見で発した言葉に、昨年の小久保裕紀監督の姿を見た (3ページ目)

  • 氏原英明●文 text by Ujihara Hideaki

「昨日も言いましたけど、あと1、2点の勝負」

 この日の試合後、そう前を向いたのは佐藤だ。阪神はここまでの4試合で6得点と打線の不調は深刻だが、佐藤は4試合連続打点を挙げるなど気を吐いている。

 特に佐藤の打席で印象に残ったのが、第4戦の8回裏の場面だ。先述したようにこの打席で佐藤は適時打を放ったが、カウント3ボールから放った一打だった。

 佐藤がこの打席で見せたのは、カウントとの勝負だった。投手と打者は球種や配球の駆け引きで戦っているが、同時に「カウント」とも戦っている。ボール先行の、いわゆる打者有利のカウントに持ち込むことは容易ではないが、常にそのせめぎ合いを繰り広げている。重要なのは、有利なカウントになった時にそれをどう生かすかだ。佐藤にはその意識が常にあり、この3ボールからの対応は、投手と打者の心理戦を象徴するかのような一打だった。

 阪神打線の上位と下位の大きな違いはそこだ。配球の勝負を意識するあまり、カウントで駆け引きすることができていない。もちろん、下位打線だと「待て」のサインが出やすい事情は理解するが、打者有利のカウントで仕掛けてこそ、コンタクト率は上がるものだ。

【小久保監督の積極采配】

 シリーズの展開が劣勢になると、「積極的にいくべきだ」という声が多くなるが、実際は優位なチームほど積極的な采配が目立つ。

 この日、ソフトバンクは6回表の攻撃において、5回まで阪神打線を3安打無得点に抑えていた大津に代打・近藤を送った。かなり早い勝負手に思えたが、この姿勢は昨年の小久保監督にはなかったことだ。

 さらに言うと、ソフトバンクは第5戦で有原航平を先発させると発表した。

 振り返れば、昨年の日本シリーズでDeNAは先発を中4日で回し、攻撃でも早い勝負を仕掛けてきた。そんなDeNAの姿勢に後手に回ってしまったソフトバンクは、日本一を逃してしまった。その教訓からか、今回の日本シリーズではソフトバンクの早い仕掛けが目立つ。

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