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中畑清と篠塚和典が語る松井秀喜と阿部慎之助の成長裏話 ミスターが張本勲を呼んで指導した「ゴジ」のすり足打法 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

【すり足打法の指導で中畑も四苦八苦】

――松井さんは日本、メジャーでも長く活躍しましたが、若手時代からそんなイメージはありましたか?

中畑 いや、あれほど順調に伸びた選手もいないんじゃないですか。スランプらしいスランプがなく、毎年数字を伸ばしていきましたから。

篠塚 入団間もない頃のゴジとは接する機会がなかったので、技術面など詳しくはわかりませんが、確かに数字は順調に伸ばしていきましたよね。

中畑 当初のゴジは"一本足打法"だったんだけど、"すり足打法"に変えさせたいと考えたミスター(長嶋茂雄氏)が張本勲さんを呼んだ時があったんだ。確か、ゴジが2年目のシーズンを迎える前のキャンプだったと思う。でも、ゴジは1年目にホームランを11本打っていて、ある程度の手ごたえをつかんでいたんだよ。

 スランプで悩んでいる時はそういうアドバイスに聞く耳を持つことがあっても、「プロでやれる」と前向きになっている時だったし、張本さんもそのことがわかるから悩んでいたわけ(笑)。ミスターは、ゴジにすり足打法をやらせたら成功する、という信念を持っていたから張本さんを呼んだわけだけど、タイミングが最悪だった。ミスターが急に呼ぶもんだから(笑)。

篠塚 当時コーチだった中畑さんは、ゴジと張本さんの狭間で大変だったんじゃないですか?

中畑 俺の立場っていうのもあるじゃない。ゴジには「やめてくださいよ」って言われるしさ。ただ、ゴジにはすり足打法が合うと自分も思っていたし、伝えることは伝えたんだ。「すり足で打つタイミングを、自分の引き出しに加えてみてはどうか。自分が苦しい時に役立つはずだし、決してマイナスにはならないと思う」と言ったりしてね。

 それで張本さんが直々に、ゴジにすり足打法を教えたんだけど、やっぱり教え方がいいんだよね。それを聞いて頭の片隅に残ったんじゃないかな。翌年はまだ一本足打法に近かったけど、翌々年くらいには完全にすり足打法になっていたから。でも、あのすり足がなかったら、ゴジの成長はなかったよな。

篠塚 今考えてみると、一本足はあまり似合わないかもですよね。

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