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小林雅英は「打たれてもベンチのせい」という無責任の境地で抑えに転向 「幕張の防波堤」の異名をとる絶対的守護神となった (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「『あっ、これだけ一生懸命がむしゃらに1個のアウトを取りにいかないと、自分は通用しないピッチャーなんだ』と。小難しいことを考えるとか、配球云々とかじゃなくて、その時にキャッチャーと交わしたサインのボールを、しっかり投げにいく。その結果、打たれるか打たれないかのどちらかだと。0点か100点しか、結果の採点はないんだと気づいたんです。

 先発ピッチャーなら、7回3失点、6回1失点だったら、負け投手でも『ナイスピッチングだったね』って評価されて、70点、80点、90点って点数をつけられるでしょう。でも中継ぎ、抑えはそうじゃなく、0点か100点。そのほうが思考もパフォーマンスもすごくはっきりしていて、自分の性にも合っているなという気づきでもありました」

 以降、リリーフ専任となった小林は「自分のパフォーマンス、自分の思考、自分のボール」で1個のアウトを全力で取りにいくことに徹した。それは投球イニング数も、走者の有無にも左右されなかった。

【突然のクローザー転向】

 そうして中継ぎで安定し始めた夏場、抑えのブライアン・ウォーレンが不振に陥る。不正投球疑惑などの問題もあったなか、8月17日、日本ハム戦でのことだった。

「8回を抑えてベンチに帰ったら、当時ピッチングコーチの井上祐二さんが『マサ、もう1回行ってくれ』って言うから、『えっ??』となって。『僕の気持ちは終わった』とホッとしているし、ウォーレンが行くと思っているから気持ちも切れている。『無理です。絶対に無理です』って言ったんです。そしたら『ウォーレンがこんな感じだし、いいから行ってくれ』って言われて」

 コーチからの懇願のようだが、実際には監督の山本からの指令である。「功児さんが行けと言っているから断り切れない」と、意を決した小林は井上に言った。

「じゃあ行きます。ただ、打たれようが何をしようが、僕は手を上げてあそこに向かっていませんよ。『行け』って言ったのはベンチということを、失敗した時にはちゃんとマスコミに言ってください。お願いします」

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