BCリーグから阪神へ 強肩強打の捕手・町田隼乙を飛躍させた「名将の熱血指導」と「プロの二軍キャンプ」 (3ページ目)

  • 井上尚子●文・撮影 text & photo by Inoue Hisako

【4番・キャプテンとして躍動】

 とはいえ、キャンプで評価されても、シーズンで結果を出さなければドラフト指名は遠ざかる。BC埼玉の清田育宏コーチは、2024年シーズンを前に「町田をNPBへ行かせる」と公言していた。

「そのために『まずは体作りだ』と言われました。オフシーズンには、清田さんがロッテ時代から個人で見てもらっていたトレーナーさんに、トレーニングを教わりましたね」

 正しいトレーニング方法を学んで意識も変わった。野球選手としての自分の体を知り、どこをどう鍛え、どう使うかを理解する。それはバッティングの向上にも繋がった。

 新シーズンを前に、町田は西崎幸広監督から「4番・キャプテン」に任命された。前年度は強力打線で優勝を勝ち取ったが、多くの選手が抜けたことで戦力ダウンが危惧されていた。そんななかで、町田へのマークが厳しくなり、大きなプレッシャーがかかることが心配されたが......そんな"小さい器"ではないことを証明した。

 本塁打こそ5本だったが、コンタクトがよくなり、シーズン打率は.323。それまで苦しんだ速球にも、「速くて打てなかった、という記憶はないですね」と振り返るように打席で余裕が出るようになった。磨いた長打力に加えて、"ここぞ"という場面の勝負強さも光った。

 ただ、もっとも変わったのは守備時の二塁送球だ。低い軌道で、強い球がいく。二塁送球のタイムはコンスタントで1.8秒後半を計測した(練習での最速は1.81)。もともと地肩は強い。投手陣がラプソード(データを測定・分析するトラッキングシステム)で球速を計測していた時、町田も試しに投げると148キロが出たという。その鋭さで、二塁に送れるようになったのだ。

 悩みに悩んだ送球が、ついに自分の形として定着してきた実感があった。だが、勝負の秋を迎える前に、予期しないアクシデントが町田を襲った。

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