【プレミア12】井端ジャパンのエース候補・才木浩人が「脱力スキル」で挑む球界ナンバーワン投手への道 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 理学療法士の資格を取得して身体操作指導をメインで行なうようになり、イタリアのセリエAのクラブとも通じるなどサッカー界で特に名を馳せている。才木はその存在を知り、トミー・ジョン手術から本格復帰を目指す2022年シーズン中にコンタクトをとった。

「本人が最初に言ってきたのが、『下半身の力が腕までつながらない』『お腹らへんに何もないです』『上半身だけで投げている感じがして、それを何とかしたい』と」

 中野トレーナーが見ると、明らかに腹圧が弱かった。そのためにまず伝授したのが呼吸法だ。

「最初に来た時、体幹がペラペラだったんです。今は大きくなってきたけど、まだまだ。外側の筋肉量が足りてないというより、体幹を膨らませていない。山本由伸投手(ドジャース)は寸胴(ずんどう)じゃないですか。あの感じを目指したいところです。腹圧を使えないと寸胴にならないですからね」

【トレーナーが語る脱力の重要性】

 故障予防とパフォーマンスアップは、一直線上にある。そう考える中野トレーナーは、アスリートに「脱力」の重要性を伝えている。

 ピッチングでもよく「力を抜け」と言われるが、なぜ大事になるのか。中野トレーナーは3つのポイントを挙げる。

「力を抜いた状態から、力を入れるから大きなパワーになるというか、ボールに伝えられる。要は力を入れた状態から力を出してもギャップが少ないので、力感ほど大きな力になっていないのがまずひとつです。大枠として」

 2つ目は、上記のメカニズムに関わるものだ。

「伸張反射です。ピッチャーの高速の腕振りは、ほとんど筋肉の反射でされています。力んでいると、それが出ません」

 伸長反射は脊髄反射のひとつで、筋肉が受動的に引き伸ばされると、その筋肉が収縮する現象のことだ。

 3つ目は、マウンドの傾斜から投げることに関係する。

「力んでいると、重力が使いにくくなります。いいピッチャーって、並進運動の時に"落ちている感覚"をすごく大事にするんですね。それが力んでいると得られないので、勢いがつかない」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る