【日本シリーズ2024】「3番・今宮健太」に見るソフトバンク小久保監督の危機管理能力と勝負勘 (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 今宮は7年前の、今回と同じ顔合わせの日本シリーズの時も主力選手だった。第2戦の神の手スライディング、第4戦では横浜スタジアムのフィールドシートに飛び込んでフライを捕るなど印象深いプレーを見せている。今回もキーマンになるのではと水を向けると「たまたまですよ」と意に介さなかったが、第2戦以降も注目プレーヤーになっていきそうだ。

 ただ、それにしても小久保監督の"決断"には驚いた。

「常に最低最悪を想定しているからね」

 監督のマネジメントとはそういうものだが、小久保監督はいつもハキハキと言葉を口にし、表情も豊かで、明朗快活なイメージもある。だけど根っこは違うのだという。

「現役の頃からそっちだったかな。あんまりメンタル強くなかったから」

 だから本を読み漁り、球界きっての読書家として現在も知られるようになった。

 シーズン中にほとんど起用していない嶺井を日本シリーズでベンチ入りさせたのも危機管理によるものだった。今季ほとんどを捕手2人制で戦った小久保監督だが、嶺井をベンチ入りさせて捕手3人にしたのだ。

「2人でやって、万が一(甲斐)拓也が第1打席で頭に当たって、海野(隆司)を出したけど途中で使えなくなった。じゃあ栗原とは言えない。レギュラーシーズンならばそれでいいかもしれないけど、日本シリーズの第1戦は違う。初戦でバタバタしたら、シリーズに響くやろうなと。それは最悪のマネジメント。ないと思うけど、(何があるか)分からんやん。最後の最後まで議論して、3人でいこうとなりました」

 石橋を叩いて叩いて、なお確かめる。それくらいの準備をして臨むのが日本シリーズだ。だからこそ、日本シリーズ第1戦で「3番・今宮」という手札をいきなり切ったのに驚いたが、短期決戦を勝ち抜くには勝負勘の鋭さも大切になる。小久保采配が第2戦以降も冴えわたるだろうか。

著者プロフィール

  • 田尻耕太郎

    田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)

    1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。

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