【現役引退】ギラギラとチャラチャラ...西武・金子侑司がこだわり続けた「人よりもカッコいいプレーをしたい」 (3ページ目)
秋山の言うように、前年の苦しい思いを糧にし、成績として結実させたのだろうか。
「1年、1年、本当に結果を出そうと思って必死にやっていました。たまたま、その年はよかったですかね(笑)。優勝してタイトルも獲れましたし、本当にいい1年だったと思います」
【人よりカッコいいプレーをしたい】
5、6年前の西武は高いレベルでレギュラー争いが繰り広げられ、それがチーム力として結実されてリーグ連覇を果たした。
そのなかで、外野の一角を勝ち取った金子自身の原動力はどこにあったのだろうか。それは「人よりカッコいいプレーをしたい」という思いだ。その真意について、プロ入り1年目にこんな話をしている。
「自分が思うカッコいいというより、見た人に『カッコいい』と思われたいという気持ちがすごくあります。カッコいいと思われるためにはヒットを打たなければいけないですし、いいプレーをしたり、盗塁をしたり、すべてのプレーに対するモチベーションになるというか。ファンの人はいつ、どのタイミングで自分を見ているかわからないですし。打てなくても守りでいいところを見せたり、守備でミスをしても打って走っていいところを見せる。自分自身のモチベーションを保つ方法と言いますか、そういう意味で人からカッコいいと思われるようになりたいですね」
入団1年目の2013年開幕戦に7番ライトで先発出場し、以降3年連続で二桁盗塁を達成。そして4年目の2016年には、「野球人生が一番変わった」という盗塁王を獲得した。
今季まで西武に通算12年間在籍して1020試合に出場、打率.241、225盗塁を記録。2016年と2019年に盗塁王を獲得し、スピードスターとしてファンに愛された。
まだやれる──。
周囲がそう思うなかで臨んだ9月15日の引退試合ではフル出場を果たし、一瞬一瞬を惜しむように笑顔を振りまいた。
「元気なうちに引退したいと思っていました。ただ年々、プロ野球でやらせてもらって『もう1年やりたいな』とか、『もう1年やったら、もっとみんな喜んでくれるかな』という思いが芽生えたのも実際ありました。最後は本当に難しかったです。もう1年頑張ってしがみついてやるという選択肢もありましたし......。でも、最初の自分の思いを通したところではありますかね。元気なまま、ライオンズファンの皆様に囲まれて辞めたいなと思いました」
引退試合ではレフトで華麗な守備を披露し、超満員のファンから大歓声を受けた。ファンに「カッコいい」と思われるようなプレーを心がけた金子らしい、華やかな最後だった。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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