「松井稼頭央監督は去年、苦しんだ部分もあったと思う」平石洋介が痛感したヘッドコーチの難しさ「確認しすぎることで監督を迷わせてないか...」 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki

 昨シーズン46試合に登板し、防御率2.53と安定感を誇示した最速160キロの甲斐野は、手術によって今シーズンの本格的な戦線復帰が不透明な森脇亮介と佐々木健の穴を十分に補える存在となる。

 投手陣は2年連続でチーム防御率2点台と、盤石を保っている。つまり、西武は「1試合で3点を取られない」チームであるわけだ。わかりやすく言えば、打線が「1試合平均4得点以上」を叩き出せば、勝率は確実に上がる。

 ただし平石は、これが現時点で机上の空論や皮算用であることを自覚している。

 1試合平均で4得点を実現できれば単純計算でシーズン572得点となるが、昨シーズン、パ・リーグ最多だったソフトバンクですら536得点で、西武は最下位の435得点だった。1試合平均約3点。「+1点」の道は険しい。

【熾烈なポジション争い】

 近年のプロ野球は「投高打低」だ。パ・リーグは顕著で、昨シーズンの3割バッターが2人のみ。ホームラン王は近藤健介ほか2人が26本で、打点王は近藤の87だった。

 この理由にピッチャーの急速な進化が挙げられるのだと、平石は見ている。

「去年、155キロ投げたピッチャーがだいたい70人。150キロになると250人くらいいるんです。平均球速も年々上がっていますし、最近はピッチャーのほうが進んでいるのは事実です。トラックマンやラプソード等であらゆる要素が数値化されるようになったことから、ボールのスピードを上げる、変化球の精度を高めるためのトレーニングも客観的なアプローチが明らかに増えましたよね。バッターはそこに早く追いつかないといけないし、とくにライオンズはそのなかで工夫しながら点を取っていくことを目指しています」

 布石は昨シーズン、すでに打っている。隙を見せない走塁などに込められた1点の執念。バッターの打席での意識も、早いカウントでわざと狙い球の変化球を空振りして餌を蒔き、追い込まれてからそのボールをとらえるといった駆け引きも「少しずつできるようになってきた」と、平石は言う。

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