守護神剥奪、サイドスロー転向...現役ドラフトでオリックスへ移籍の鈴木博志が語る紆余曲折の6年と新天地にかける思い (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 この年、鈴木は6試合に登板して、防御率12.91と目を覆うような成績に終わっている。その年のオフ、鈴木は首脳陣から「サイドスロー転向」の打診を受ける。

「体の振りが横だからどうだ? と言われて、試しに投げてみたら152キロ、153キロと球速も出て。これはいいなと思ったんですけどね......」

 だが、結果的にサイドスロー転向は裏目に出る。鈴木は自身の指先を見つめながら、こう続けた。

「サイドにしてから、指にかかったボールが投げられなくなってしまったんです。ボールを握った時点で不安で、どう投げていいのかわからなくて」

 幸いツーシームは好感触があり、ストレートよりも球速が出た。そのため、マウンドに上がると、鈴木はツーシームとカットボールばかりを投げるようになる。かつて猛威をふるったストレートは、ほとんど投げなくなった。

 こうしたエピソードを挙げていくと、中日首脳陣の力量を疑う読者もいるかもしれない。だが、鈴木本人はそうとらえておらず、恨みつらみを口にすることもない。

「人のアドバイスを何でも素直に聞いちゃうタイプなので、人の意見に左右されてグチャグチャになった部分はあると思います。でも、どんな失敗をしても嫌じゃないですし、今後に生きる経験になるはずです。やっている時はしんどいけど、今は我慢する時期なのかなととらえています」

【毎日があっという間に過ぎていく】

 それでは、福良GMの求めるパフォーマンスはとうてい実現不可能なのか。「福良GMのコメントはどう受け止めていますか?」と聞くと、鈴木はつぶらな瞳を真っすぐこちらに向けてこう答えた。

「去年の後半くらいから感覚がよくなり始めて、ボールの質がよくなってきました。回転数は1年目と変わらないくらいまで上がってきています。GMからも真っすぐの質について話していただきましたし、真っすぐは生命線だと考えています。強いボールを投げ続けていきたいですね」

 2月6日、今キャンプで2回目のブルペンに入った鈴木は1球1球しっかりと確かめるように、丁寧に投げ込んだ。時折、低めにキャッチャーミットを強く叩くボールも見られた。その一方でリリースの爆発力は乏しく、球速はまだ本来の状態にはないことがうかがえた。

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