ソフトバンク・小久保裕紀新監督に聞く「なぜ3年間優勝できなかったのか?」 チームが「ちょっと緩んでいたというのが正しいのかな」 (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

4年ぶりのリーグ優勝を目指すソフトバンク・小久保裕紀監督 photo by Hanjo Ryoji4年ぶりのリーグ優勝を目指すソフトバンク・小久保裕紀監督 photo by Hanjo Ryojiこの記事に関連する写真を見る── 小久保監督が目指す組織とは?

小久保 みんなが同じ方向を見る。一軍が目指すのは、当然勝つことです。二軍から四軍のファームは勝つことがすべてではありませんが、一軍の姿を学びながら、選手たちはいずれ狭き門の一軍に入っていくことを目指す。それが本来あるべき美しいピラミッドだと思います。だから、トップを預かる僕はファームに手本を示すことのできる、そういう軍団にしないといけないという思いがあります。

── 近年はそこの部分が緩んでいた?

小久保 そこは緩んでいたというよりも......いや、ちょっと緩んでいたというのが正しいのかな。僕だけじゃなく、そう感じている人はいっぱいいたと思います。だから、誰でもできるというか、「できないが存在しないルール」を設定してスタートしました。二軍では今までもやってきたことですが、それを形骸化せずしっかり明文化したうえで、必ず守らせます。就任会見後の最初のチーム練習でも選手たちには「勝利の女神は細部に宿る」という話をしました。普段のウォーミングアップの姿勢。自分の身の回りをきれいに保つ。他人に迷惑をかけない。そういうところの全部が勝ちにつながっていくと思う。細かいことに聞こえるかもしれませんが、突き詰めていきたいと思っています。

── 2022年シーズンはマジック1点灯から惜しくも優勝を逃し、23年は優勝したオリックスに15.5ゲームの大差をつけられました。それでもチームへの評価は相変わらず高い。意識の持ち方など、細かなところでホークスはまた強くなれると思いますか。

小久保 はい。戦力としては十分優勝を狙えるという認識です。だから、もちろん監督を引き受けた限り、勝つために動くのは当たり前。ただ、それと同時に"王イズムの継承"ということも球団から求められたこと。現役時代に一緒にプレーしていた城島健司が、今はフロントに入っている。彼とともに何が王イズムなのか、しっかり明文化して残していくことも使命だと思っています。そのためにも一軍の主力選手たちは手本意識を持ってもらわないといけない。過去、我々は現役当時にファームの若い選手たちに示すんだという思いを持っていました。その思いをプレーで示してほしいです。プレー以外にも......ですね。

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小久保裕紀(こくぼ・ひろき)/1971年10月8日、和歌山県生まれ。星林高から青山学院大に進み、92年のバルセロナ五輪で学生から唯一日本代表に選手され、銅メダル獲得に貢献した。93年、逆指名(ドラフト2位)でダイエー(現・ソフトバンク)に入団。2年目の95年にレギュラーに定着し、本塁打王に輝く。99年にも打点王のタイトルを獲得した。03年オフに巨人に移籍し、07年にFA権を行使して古巣に復帰。09年からはキャプテンとしてチームをまとめ、11年には日本シリーズでMVPを獲得。12年には通算2000本安打を達成し、同年限りで現役を引退。引退後は13年から17年まで侍ジャパンの監督を務め、21年にソフトバンクの一軍ヘッドコーチ、22、23年は二軍監督、24年から一軍監督として指揮を執る

プロフィール

  • 田尻耕太郎

    田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)

    1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。

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