「ギャンブルスタート」を生んだ伝説のバックホーム 野村克也が悔しがった辻発彦のワンプレーが野球史を変えた (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

【ギャンブルスタートが誕生】

── 一死満塁で三塁走者が気をつけないといけないのは、ライナーで戻れずにダブルプレーです。あの場面、広沢選手は打球が地面に着いてからスタートしましたが、セオリーとしては間違っていません。

 あの状況はワンアウトでしたし、攻撃側からすれば一か八かの本塁突入はできない。打者がアウトでもツーアウトで、まだチャンスはあるわけですから。

── 野村監督はあの教訓から、どうしても1点がほしい時は一か八かのスタートをきる"ギャンブルスタート"を編み出しました。投球がバットに当たった瞬間にスタートし、ライナーゲッツーはOKだと。いずれにせよ、辻さんの好捕・好返球が野球史を変えるきっかけになったわけです。

 翌93年の日本シリーズはセンター飯田哲也のバックホーム、潮崎のシンカーを覚えた高津臣吾が守護神となって、西武を破りヤクルトが日本一になりました。この2年間の日本シリーズは、どちらに転ぶのかわからない展開で、野球の醍醐味が詰まった戦いでした。ヤクルトにとっても意義のある日本シリーズになったと思いますが、まさか96年からヤクルトでプレーするとは想像もできませんでした。

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