「ギャンブルスタート」を生んだ伝説のバックホーム 野村克也が悔しがった辻発彦のワンプレーが野球史を変えた

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

辻発彦が語る日本シリーズ激闘の記憶(後編)

前編:辻発彦が明かす伝説の走塁の真実はこちら>>

中編:辻発彦が語る西武の強さの理由はこちら>>

 今でも語り継がれる1992年、93年の西武とヤクルトとの日本シリーズ。サヨナラ満塁アーチあり、奇跡のバックホームあり、これぞプロフェッショナルという醍醐味を存分に見せてくれた。このシリーズでも辻発彦氏は数々の名プレーを演出。西武とヤクルトとの死闘を振り返る。

92年日本シリーズ第7戦、同点の7回裏、辻発彦の好守でピンチをしのいだ西武92年日本シリーズ第7戦、同点の7回裏、辻発彦の好守でピンチをしのいだ西武この記事に関連する写真を見る

【名手・辻の本領発揮】

── 92年の西武は、9月30日に早々とリーグ3連覇を決めました。一方、野村克也監督率いるヤクルトは、10月10日に14年ぶりのセ・リーグ制覇。10月17日から始まる日本シリーズは、西武の圧倒的優位の前評判を覆し、第7戦までもつれ込みました。

 92年の日本シリーズは岡林洋一ですね。結果的に、第1戦、4戦、7戦と完投しました。打線は、1番の飯田哲也がクセ者で、クリーンアップもみんな一発もあったしすごかった。とくにハウエルをマークしました。ハウエルは、潮崎哲也の浮き上がって沈むシンカーをまったく打てなかった印象があります。いずれにしても、そう簡単には勝たせてくれないなと思いました。西武もヤクルトも、似た者同士の印象がありましたね。

── 第1戦は杉浦亨(ヤクルト)が代打満塁サヨナラ弾、第2戦は清原和博(西武)が決勝2ラン、第3戦は石井丈裕(西武)が完投勝利、第4戦は秋山幸二(西武)が決勝ソロ本塁打、第5戦は池山隆寛(ヤクルト)が延長10回に決勝弾、第6戦は秦真司(ヤクルト)がサヨナラ弾と、とにかく劇的な展開でした。

 投手の顔ぶれを見るとヤクルトは少し不安があったのかもしれませんが、フタを開けてみれば最終戦までもつれました。翌93年も同じカードで第7戦までいきましたし、まさに死闘でした。この2年については、ごっちゃになってしまうことがあるほどです。

 昔はよく「第2戦が大事だ」と言われていましたが、実際やっている選手からすれば、やはり「第1戦が大事」ではないかと思います。周囲は「第1戦はデータ収集」と言いますが、選手にそんな余裕はありません。

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