アメリカでWBCは「やるべきか」「やめるべきか」の大論争 プエルトリコ守護神の悲劇にファンや選手から様々な見解 (2ページ目)

  • text by Saku Yanagawa
  • photo by Getty Images

 28歳のエドウィン・ディアスは、昨季61試合に登板すると32セーブをあげ、防御率も1.31とメジャー屈指の成績を残した。シーズンオフにはメッツと救援投手史上最高額となる5年1億2000万ドル(約150億円)の超大型契約を交わしたばかり。入場曲として用いる『Narco』のトランペットは本拠地シティ・フィールドの名物となっている。

 メッツのオーナーであるスティーヴ・コーエンの莫大な資産を元手に積極的な選手補強を繰り返し、悲願のワールドシリーズ制覇を目指すメッツにとって、この守護神の離脱はあまりにも痛すぎるニュース。ESPNを含めた全国のニュースでもこの一件が報じられると、ネット上はメッツファンにとどまらず、多くのMLBファンによるWBCへの批判で溢れることになった。

【マイク・トラウトの見解は?】

「恐れていたことが起こってしまった。こんな意味のない大会やる必要ないって言ったのに」

「この時期に開催するからこうなるんだ。各チームが選手を出し渋るのも当然だ」

「WBCの存在意義自体考えなきゃならない。肝心のシーズンに影響が出てるじゃないか」

 第5回目の開催となった今なお、従来のMLBファンのなかには、WBCの優勝よりもワールドシリーズの制覇にこそ意義を見出そうとする層も多い。贔屓チームの選手が、シーズンオフの大会に出場し、そこでシーズンを棒にふる大ケガを負ったとあれば、怒りの矛先を大会自体に向けたくなるのかもしれない。

 もちろんWBCの開催を支持するファンも多い。とりわけドミニカやベネズエラなど、アメリカ以外の地域のベースボールファンは自国のスターが活躍する国際試合の楽しさを目一杯享受している。今大会、その盛り上がりはむしろアメリカ以外で顕著だった。

 そもそも、世界に野球の裾野を広げる狙いで開催されているWBC。そのミッションは、少なからず目標へと確実に向かっている。

 いずれにせよ、同日、コロンビア戦に勝利し準々決勝進出を決めたアメリカ代表のマイク・トラウト(エンゼルス)は、試合後の会見でディアスのケガについて質問されるとこう答えた。

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