ヤクルトコーチ嶋基宏が語る「弟子」への期待と自らの役割。現役時代に「すごい」と思った捕手の名も挙げた (3ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Sankei Visual

――ちなみに、嶋さんが現役時代に「このキャッチャーはすごい」と思った選手はいますか?

「私が若手の頃は、阿部さん(慎之助・現巨人ヘッド兼バッテリーコーチ)や、谷繁さん(元信・元中日監督)と対戦した際に、リードや打撃面でも『素晴らしい』と思うことばかりでした。私の後からプロ入りしてきた選手でいうと、ソフトバンクの甲斐拓也でしょうか。肩の強さなど能力のすごさもありますが、育成契約から這い上がるといった過程もふまえてですね。

 ソフトバンクの正捕手となって日本一4連覇に貢献し、日本代表でも活躍するまでのキャッチャーになった。彼にしかわからないプレッシャーがある中で結果を残し続けてきたことは、年齢なども関係なく尊敬します」

――あらためて、嶋さんにとってキャッチャーとは?

「キャッチャーは"チームリーダーになる存在"と自分に言い聞かせていました。野手の中で唯一、他の選手たちの顔が見られるポジションですし、みんなを引っ張っていかなければなりません。監督が目指す野球をグラウンドで表現し、一番に遂行する。それがキャッチャーだと思ってマスクを被っていました」

――最後に、コーチとして迎える来季について、意気込みを聞かせてください。

「指導者に専念するのは1年目で、失敗することもあると思います。それを繰り返さないように自ら成長し、ステップアップしていきたいです。選手がやりやすい空気や雰囲気を作り、チームのリーグ3連覇、日本一を奪還、その先もチームを支えていけたらと思っています」

【プロフィール】
嶋基宏(しま・もとひろ)

1984年生まれ、岐阜県出身。 2006年の大学・社会人ドラフト3巡目で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団し、1年目から1軍で活躍。2010年には自身初となる打率3割を達成。ゴールデングラブ賞・ベストナインに選出される。2010年オフより選手会長としてチームを牽引し、2013年にはリーグ優勝、日本一を経験。 2019年のシーズン後、東京ヤクルトスワローズへ移籍。2022年は選手兼コーチ補佐としてチームを支え、シーズン終了後に現役引退を発表。ヤクルトの1軍バッテリーコーチ兼作戦補佐に就任した。

【著者プロフィール】
寺崎江月(てらさき・えげつ)

丙午(ひのえうま/1966年)生まれ。TBSの派遣AD、企業の営業を経て、2008年の『西岡剛7』(三修社)からNPB専門の野球ジャーナリストとして活動をスタート。『PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?』(ぴあ)、2012年に巨人・長野久義から始まった廣済堂出版のメッセージBOOKシリーズ全18作品の企画プロデュースを担当。そのほか、現中日ドラゴンズ立浪和義監督『攻撃的守備の極意』など“極意シリーズ”、『アライバの鉄則』といった名選手たちのマスターズメゾットも担当する。

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