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大工からヤクルト入りを果たした本間忠。田畑一也や城石憲之らにかわいがられ、「壁を感じたことは一度もない」と1年目から活躍した

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

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連載『なんで私がプロ野球選手に!?』
第9回 本間忠・後編

前編:無名の大工見習いだった本間忠はいかにしてヤクルトに入団したのか>>

 異色の経歴を辿った野球人にスポットを当てるシリーズ『なんで、私がプロ野球選手に!?』。第9回後編は、大工からプロ入りを果たした本間忠の「決死の高卒4年目」からスタートする。

ストレートは最速148キロに

 野田サンダーズの捕手を務める大橋亮は、見違えるような本間忠のボールに目を丸くした。

「ボールの質、スピードがまるっきり変わりました。タテ回転のスピンが効いて、ホップするような球筋なんです。あまりにすばらしくて、ビックリしました」

 日本文理高を卒業して4年目。本間は「今年でプロに行けなければ、野球をやめる」と悲壮な覚悟を固めていた。

 平日も午後3時には大工の仕事を上がり、母校の日本文理で練習する。反対を押し切って大学を中退した不義理を働いたにもかかわらず、恩師の大井道夫は「おまえが決めたことなら、責任をもって動けよ」と応援してくれた。

 母校での練習後は、スポーツジムでウエイトトレーニングに励んだ。それまで「ウエイトなんてしたこともなかった」という男が、真剣に肉体改造に取り組んだ。高校時代から本間を知る大橋は、その変わりように衝撃を受けた。

「あいつのそれまでの性格からして、『練習やれよ』と言っても『大丈夫っすよ、やってますよ』と言ってサボるようなヤツでしたから。自分の意思でジム通いして体をつくり直していたので、『本気で上(プロ)でやりたいんだな』と感じました」

 それまで86〜87キロだった体重は92〜93キロまで増量。それに伴い、最速143キロだった球速は148キロまで向上した。本間自身、「スピードが上がったら目立つはず」と狙ったとおりの効果が出ていた。そして大橋は「コントロールもよくなった」と手応えを得ていた。

「インコースの『内ズバ』を使えるようになりました。普通のピッチャーならピンチではデッドボールが怖いのでインコースは使いにくいですが、本間はカウント球にも勝負球にも使えるんです。配球の幅が広がって、リードが楽しくなりました」

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