CS突破のキーマン、ソフトバンク松本裕樹の新球「サイドスピンチェンジ」はいかにして完成したのか

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 優勝マジック1で迎えたペナントレースのラスト2試合で連敗したソフトバンクは、10月8日から始まるクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで本拠地・ペイペイドームに西武を迎え撃つ。

 初戦からの先発投手はソフトバンクが千賀滉大、東浜巨、石川柊太、西武は?橋光成、今井達也、松本航と予想され、いずれも力のある投手陣を誇るだけに継投が勝負の分かれ目になるだろう。

9月以降、抜群の安定感を見せるソフトバンクの松本裕樹9月以降、抜群の安定感を見せるソフトバンクの松本裕樹この記事に関連する写真を見る

キャリアハイの44試合に登板

 そんななかカギを握るひとりが、ソフトバンクの高卒8年目右腕・松本裕樹だ。今季はオープン戦でアピールして先発ローテション入りが内定していたものの、鍼治療を受けた際のアクシデントで出遅れ、チーム事情もあってブルペンへ。

 守護神のリバン・モイネロ、セットアッパーの藤井皓哉につなぐ役割をシーズン途中から担い、とくに9月以降は16試合に登板し、失点したのはわずか2試合という抜群の安定感を見せた。

 今季、キャリアハイの44試合に登板した松本の躍進が語られる際、最も注目されるのがストレートだろう。球速は140キロ台後半から150キロ台前半で、コースいっぱいを突く制球力が目を引く。

 このストレートの効果を相対的に高めているのが、今季新たに投げ始めたチェンジアップだ。「マルちゃん直伝」と報じられたように、昨年までソフトバンクに在籍し、現在はサンディエゴ・パドレスで活躍するニック・マルティネスから握り方を教えてもらったという。

 チェンジアップという球種はさまざまなバリエーションがあり、投手としての方向性にも影響を与えるボールだ。日本では鷲づかみやサークルチェンジ(「OKボール」とも言われるように、親指と人差し指で「OK」のように輪をつくって握る)で、「抜く」ように投げるイメージが強いかもしれない。もともとこうした投げ方がアメリカから伝えられ、ストレートと球速差を大きくつけて「奥行き」で打ちとる球と考えられてきた。

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