ラッキーゾーン撤去から始まった92年タイガースの快進撃。八木裕「なんぼ点とればええの?」から投手陣が変わった (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

 勢いに乗ったチームは6月9日の中日戦、中村監督が率いて3年目で初めて単独首位に立つ。打線は10安打で6点をとり、3年目右腕の葛西稔がシーズン3勝目をプロ初完封で飾った。その時点で先発陣では仲田幸司が7勝、中込伸が6勝、湯舟敏郎が3勝を挙げ、リリーフ陣では抑えの田村勤が3勝12セーブ。近年にない投手陣の安定を八木は感じていた。

「明らかに失点は減っていたので、これは今までのタイガースの戦い方とは違うなと。こう言ったら申し訳ないですけど、90年、91年は得点してもすぐに逆転されて、『あれ、なんぼ点とればええの?』って言いたくなるような試合が多かった。それがガラッと変わって、試合中盤から終盤でリードしていたら、そのまま勝ち切れるスタイルになりましたよね」

復調のきっかけはオールスター

 一方で打線は6月半ば、4番のトーマス・オマリーが約1カ月ぶりに復帰。代わりにサードを守っていた新庄がショートに回ったが、7月に入るとセンターを守ることになった。センターだった八木がレフトに回り、亀山はライトに固定された。

「新庄も外野の経験は少なかったですけど、私よりも足があって、肩も強い。私は仕方なくレフトに回りましたが、結果的によかったと思います。外野は3人とも足が速かったので、ヒット性の打球をアウトにしたり、ランナーの進塁を防いだり、ピッチャーも助かったんじゃないでしょうか。そういう面で、守り勝つ野球ができていったんじゃないかと思います」

 鉄壁の外野陣が形成されていく途上、チームは負けが込んでいた。6月28日の中日戦、それまで5勝14セーブだった"守護神"田村が抑えに失敗し、初黒星を喫する。そこから勝てなくなり、7月8日の大洋(現・DeNA)戦で野田浩司が完封するまで7連敗。貯金も使い果たして「また暗黒の時代に逆戻りか......」とも言われたが、チーム内はどんな雰囲気だったのか。

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